研究課題/領域番号 |
24700589
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
竹井 裕介 東京大学, 情報理工学(系)研究科, 助教 (00513011)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 嚥下 / 3軸力センサ |
研究概要 |
初年度は、口蓋に貼り付けるためのMEMS圧力、せん断力、温度センサの形状、材料および配線形状の設計を行った。圧力とせん断力が計測可能なプロトタイプセンサを製作し実際に被験者の口蓋にセンサを固定し、水を5 ml、10 ml、15 ml、20 ml嚥下した際の舌が口蓋に及ぼす圧力、せん断力の計測を行った。配線部の厚さは80 µmであり、上下の前歯の隙間より十分に薄いため、自然な咀嚼・嚥下動作を阻害しない。このセンサは、市販されている義歯固定剤を用いてセンサを口蓋に固定した。固定して、30分後にセンサの固定が外れていないか確認したところ、位置ずれや剥がれは認められなく、十分な固定力が得られることが確認された。 センサの構造は、MEMS技術により作製した、ピエゾ抵抗効果を利用した長さ200 μm、幅100 μm、厚さ0.3 μmのカンチレバー型の力センサを、シリコーンゴムなどの弾性体に埋め込んだものである。弾性体に力が加わり変形すると、内部に埋め込まれたカンチレバーの根元部分が歪み、長さが局所的に変化することで、電気抵抗が変化する。この電気抵抗変化を計測し、弾性体に加えられた力を推定する。また、金属抵抗やピエゾ抵抗を測温抵抗体として利用する温度センサを用いて、口内の温度を計測した。この、温度センサは、温度を測るのみならず、圧力、せん断力センサの温度補償のために用いた。 また、本センサを口蓋に固定し、水の嚥下の実験を歯科医の立ち合いのもと執り行い、嚥下時の舌の動きが計測できることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2012年度の当初の計画であった、センサの設計、製作を完了し、当該センサを口蓋に固定し水嚥下時の舌の動きが計測可能であることを確認した。また、次年度である2013年度に予定していた水以外のゼリーなどの半固体食品の咀嚼、嚥下実験にもすでに着手し、センサの固定方法や耐久性に関して問題がないことが分かった。
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今後の研究の推進方策 |
被験者の口蓋に3軸力センサを固定し、液体、半固体(チーズやヨーグルトなど)の食品の咀嚼、嚥下実験を行う。咀嚼、嚥下時の舌の動きと、センサにより計測した圧力、せん断力、温度の関連付けを行う。口蓋の前部と後部の2か所にセンサを配置し、舌の前後でどのように嚥下時の働きが異なるかを考察する予定である。その際には、各センサで4チャンネルの信号を計測する必要があり、また嚥下時間の把握のために、嚥下のタイミングで被験者に押してもらうハンドスイッチの信号で1チャンネル、計9チャンネルの信号処理が必要であることが見込まれる。当初、2012年度の予算計画では、12チャンネル計測可能な構成のデータロガーを購入予定であったが、予期せぬ実験装置の故障に伴い、修理費の支出があったため、フルスペックでの購入ができなくなってしまった。そのため、2012年度は、年度内の実験計画で必要な8チャンネル分が計測可能な構成でデータロガーを購入し、9チャンネル以上必要となる2013年度に多チャンネル計測が可能となる増設基板を追加購入することとした。そのため、2012年の予算の一部を次年度に繰り越して使用する。
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次年度の研究費の使用計画 |
様々な粘度の液体を用いて、液体嚥下時の舌の動きを計測する。液体の粘度を調整するために、市販のとろみ調整剤を用いる。また、調整した液体の粘度を計測するために、回転式粘度計の購入を検討している。また、口蓋に複数のセンサを取り付けることを検討しており、その際には9チャンネル以上の信号の計測が必要なため、前年度に購入したデータロガーを多チャンネル化するための、基板回路の増設を行う予定である。2013年度以降は、多くの被験者からのデータ取得を目指しているため、2012年度に確定した仕様をもとにセンサを製作していく。そのためのシリコン基板、蒸着用金属ターゲット、シリコンゴム、配線基板等のセンサ材料も購入予定である。
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