研究課題/領域番号 |
24700593
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 北陸先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
末光 厚夫 北陸先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 助教 (20422199)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 医療・福祉 / 生体機能代行 / 筋電義手 / ニューラルネット |
研究概要 |
まず,上肢動作の呈示と上肢切断者による推定性能の評価のために必要な上肢の動作に関連した関節の角速度を自由にコントロールでき,外部入力によってリアルタイムに動きを制御可能な3DCGハンドの開発を進めた.また,数名の被験者に従来の研究で識別対象となっている動作(手首屈曲・伸展,握る,開く,前腕回内・回外など)を含めた十数種類の動作を異なる速さで行ってもらい,腕の複数の部位からEMG信号と主要な関節の角速度を計測した.そして,動作速度に高い相関のある特徴量を見つけるために,計測したEMGデータに対して代表的な特徴抽出法を適用し,静的側面と動的側面から振幅と周波数に関する特徴量の分析を行った.これらと並行して,動作と速度の推定をより実用的且つ高精度で行えるよう従来の前腕動作推定システムの拡張に取り組んだ.この際,従来の手法では,認識すべき動作の種類が多いと,それとは無関係な日常的な動作をいずれかの動作と判断してしまう「誤検出」が生じやすいという問題があることがわかった.そこで,この問題を解決するため,新たな多クラス識別法(half-vs-half法)を提案し,従来の前腕動作推定システムに適用して検証を行った.この新手法に対し,動作時の姿勢や,日常的な動作を考慮した現実的な状況下で評価実験を行った結果,現在最も有望な識別手法の一つであるサポートベクターマシン等の既存手法と比べて,同等以上の動作認識率を示すとともに誤検出が低下することがわかった.提案手法は,クラス数が増えても計算量がそれほど増えず,パラメータ依存性が低くカーネルの設計も不要であることから,従来よりも実用性の高い動作推定手法を確立することができたと言える.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度実施予定であった「上肢の動作に関連した関節の角速度を自由にコントロールでき,外部入力によってリアルタイムに動きを制御可能な3DCGハンドを作成する」がまだ完全には達成できていないため.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,最優先で3DCGハンドを完成させ,構築した3DCGハンドを用いた動作呈示による学習データ(EMG信号とそれに対応した速度)取得手法を確立する.また並行して,これまでに提案した選択的不感化ニューラルネットに基づく前腕の動作推定システムをベースにして,動作とその速度を同時に推定するシステムのプロトタイプを構築する.そのために,次のように研究を進める. 1. 3DCGハンドの開発に最優先で取り組み,必要な機能を持った3DCGハンドを完成させる.そして,構築した3DCGハンドを用いて数名の被験者にさまざまな動作呈示を行い,3DCGハンドに合わせて動作している際のEMG信号と関節の角速度のデータを収集する.次に,学習に必要なEMG信号と対応する速度を得るために,これらのデータセットに対して,ゼロクロス法を用いてEMG信号から動作区間を抽出し,その区間の実際の速度パターンと呈示された3DCGハンドの速度パターンを比較分析する.この結果を基に,動作区間の伸縮やデータ補間の方法を音声信号処理の考え方を参考に検討し,計測したEMG信号に速度を対応付ける手法を確立する. 2. 1年目の成果を基に,申請者らが提案している前腕の動作推定システムをベースに動作とその速度を同時に推定するシステムのプロトタイプを構築する.そして,構築した動作・速度推定システムに計測したデータの一部を学習させ,未学習のデータから動作とその速度が正しく推定できるか検証を行う.その際,トレーニングデータ数や学習パラメータを変えながら評価実験を繰り返し行うことにより,最適な条件やパラメータを検討するとともに,構成要素の挙動および全体としてどのような能力を示すかも調べ,必要に応じてシステムを改良しながら精度の向上に取り組む.
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次年度の研究費の使用計画 |
3DCGハンド開発の遅れにより,初年度予定していた必要なハードウェアを購入できていなかった.この分を含めて次年度は,3DCGハンドがリアルタイムでスムーズに動作するよう専用のPCを1台購入する.また,EMGの計測に必要な筋電計用ディスポーザブル電極,実験消耗品(アルコール消毒液等),および大量の計測データを保存するためのHDD記憶メディアを消耗品として購入する.また,EMG計測等の実験に協力してくれる被験者に対して謝金を支払う.そして,外部機関での計測実験,研究打ち合わせ,および研究成果の発表に係る旅費を使用する予定である.
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