本年度は,被験者数をさらに増やし,手首関節のピッチ軸回転(屈曲・伸展方向)の動作とロール軸回転(回内・回外方向)の動作を低速から高速まで広い速度範囲で行ってもらった際のそれぞれの軸の角速度と手首・ひじ周りの表面筋電位を計測した.そして,構築した関節角速度推定システムの推定精度を向上せるために,計測したデータを用いて,角速度推定のシミュレーション実験を繰り返し行いながら,結果に基づいて特徴量やパラメータの見直しを行った.最後に,指摘のあったカルマンフィルタを用いた手法とサポートベクター回帰を用いた手法と比較実験を行い,提案システムの有効性を検証した.その結果,提案システムの推定誤差はカルマンフィルタのピッチ軸周りの結果を除いて全て有意に小さいものであった(ピッチ軸周りの結果に関しても,有意差はなかったが誤差の平均値はカルマンフィルタよりも小さかった).提案システムの具体的な推定誤差は,ピッチ軸,ロール軸周りの角速度の最大値(ピッチ軸:1440deg/s,ロール軸:1920deg/s)の10%以下であった.また,予測性能に関しても向上し,24ms前の表面筋電位を用いても,現在の表面筋電位を用いた場合と同程度の精度で角速度を予測することができた.
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