研究課題/領域番号 |
24700598
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 関東学院大学 |
研究代表者 |
阿部 清彦 関東学院大学, 工学部, 助教 (40408646)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 瞬目計測 / 随意性瞬目 / 視線入力 / コミュニケーション支援 |
研究概要 |
本研究では福祉分野での応用を目指し、家庭用ビデオカメラと一般的なパソコンのみで視線と瞬目を利用したコミュニケーション支援システムを開発することを目的としている。具体的には、ユーザの視線と意識的な瞬目の情報を捉え、パソコンのディスプレイ上に表示されているアイコンを注視し意識的に瞬目を行なうことにより、そのアイコンの選択と決定を行なうシステムの開発を目指す。このようなシステムの要素技術として、視線計測と瞬目種類の識別手法が必要となるが、これらのうち視線計測について、研究代表者は実用的な方法を既に開発しており、本研究では瞬目種類の識別について研究を進めている。 瞬目は、数百ミリ秒で一連の動作を完了する比較的高速な生理現象である。そのため、高速ビデオカメラを使用し被験者の眼球画像を撮影し、その画像から意識的な瞬目(随意性瞬目)と無意識に生じる瞬目(自発性瞬目)を識別するためのパラメータを調査した。このとき本研究で開発した画像計測ソフトウェアを使用し、被験者の眼球開口部面積の時間的変化を捉えることにより、瞬目を波形として計測した。その波形から、瞬目の持続時間、最大振幅値、閉眼および開眼時の速さを計測することができ、いずれのパラメータにおいても随意性瞬目および自発性瞬目での有意差を確認できた。 また本研究では、研究代表者らが既に開発した一般的な家庭用ビデオカメラ(1080iハイビジョン規格)の撮影画像を走査線の位置により分割し、計測の時間分解能を2倍にする手法(フレーム分割法)を用いる。上述の高速度ビデオカメラによる計測結果のうち、瞬目の持続時間をパラメータとすると、フレーム分割法でも実用的な精度で随意性瞬目の識別が可能であることを実験により確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では、高速ビデオカメラにより瞬目の特徴パラメータについて計測および調査を行なう予定であったが、さらに一般的なビデオカメラを用いて瞬目の種類を識別する手法について提案することができた。これは、研究代表者らが開発をしてきた各種計測ソフトウェアやシステムを最大限活用し、短期間のうちに高速度ビデオカメラを用いた高度な画像解析システムを実現できたためである。このことにより、実用的な視線と瞬目によるコミュニケーションシステムの開発のために、多くの資料とノウハウを蓄積することができた。 また、本研究課題で計測をした瞬目についての実験データはすべて電子的にライブラリ化し、今後の研究での基礎資料として再利用できるように環境を整えた。来年度以降の研究においても、本年度に計測した実験データを活用する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究成果として、一般的なビデオカメラにより瞬目の種類を識別することができるようになった。この手法では、撮影された瞬目の動画を60フレーム/秒のサンプリングレートで解析することにより、その持続時間をもとに随意性瞬目であるかどうかを識別している。 本研究の目標である、視線と瞬目を用いたコミュニケーション視線システムを開発するには、この随意性瞬目の識別法を研究代表者らが開発してきた視線計測システムに組み込む必要がある。いままでに開発してきた視線計測システムは、処理のサンプリング間隔が100ミリ秒程度(10フレーム/秒)であり、本年度開発をした瞬目識別法のサンプリング間隔に比べ大きいため、上述の瞬目種類識別法では、リアルタイム処理に向かない。 そのため、今後は「視線計測処理のサンプリングレートを向上する」、または「10フレーム/秒程度のサンプリングレートでも、随意性瞬目を識別できる手法を確立する」などの手段で、この問題を解決する必要がある。前者については、視線と瞬目を計測するコンピュータを分け並列処理をする方法が考えられ、後者については、瞬目の特徴パラメータのうちサンプリングレートが低下しても識別が可能であるものを調査する必要がある。早期のうちに、いずれの手法を採用するかを決定し、システムの実用化に向けて研究を進める予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
高速度ビデオカメラによる計測データは膨大なものになるため、その保存用として大容量の固定磁気ディスク装置などを購入する予定である。また、研究成果をまとめ国内学会にて報告を行なう。
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