本課題では福祉分野での応用を目指し、視線と瞬目を利用したコミュニケーション支援システムを開発することを目的としている。具体的には、ユーザの視線と意識的な瞬目の情報を捉え、パソコンのディスプレイ上に表示されているアイコンを注視し意識的に瞬目を行なうことにより、そのアイコンの選択と決定を行なうシステムの開発を目指す。開発するシステムは、家庭用ビデオカメラとパソコンから構成されており、視線および瞬目を画像解析により計測する。これらのうち視線計測について、研究代表者は実用的な方法を既に開発している。 意識的に生じさせる随意性瞬目と、無意識に生じる自発性瞬目を識別するには、その特徴パラメータを利用する。実験の結果、瞬目の持続時間、最大振幅値、閉眼および開眼時の速さを計測することができ、いずれのパラメータにおいても随意性瞬目および自発性瞬目での有意差を確認できた。本課題の初期段階では、ビデオカメラによって撮影された各フィールド画像に対し解析を行ない、60fpsのサンプリングレートで詳細に瞬目を計測し特徴パラメータを抽出していた。しかしながら、視線入力は処理コストが高く、パソコンによる処理ではたかだか10ps程度のサンプリングレートしか実現できていない。 そのため、低サンプリングレートにおいても良好に抽出のできる、瞬目特徴パラメータを実験により求めた。その結果、瞬目の持続時間は瞬目の種類によって差が大きく、随意性瞬目および自発性瞬目の識別に適していることを確認した。この結果をもとに、持続時間による瞬目種類識別アルゴリズムを視線入力インタフェースに実装した。これにより、随意性瞬目で入力決定を行なう視線入力インタフェースを完成させることができた。
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