研究課題/領域番号 |
24700604
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研究機関 | 石川工業高等専門学校 |
研究代表者 |
藤岡 潤 石川工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (20342488)
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キーワード | センシングデバイス / ライフログ / 介護補助 |
研究概要 |
本研究では感圧導電繊維という素材に着目し、長時間の生体計測を想定した装着時の負担が小さい装着型計測装置(ウェアラブルデバイス)の開発およびそれを用いた日常身体活動の評価を行った。感圧導電性繊維とはステンレスとポリエステルの短繊維(30~40mm)を一定の割合で混紡した糸である。感圧導電繊維は変形によって導電繊維同士の接触率が変化し、その電気抵抗が変化するという性質を持つため、これを用いて服を製作することでウェアラブルなモニタリングデバイスの製作が容易に可能となる。 本年度新たに製作した計測装置は全身の日常生活動作の計測を行なうため、日常的にに着衣可能な布製のインナー(上下)で構成されたもので、上半身に4箇所、下半身側に4箇所の計測点を設置している。これにより、全身の動作を被験者の負担なく恒常的に計測することが可能となる。また、昨年度開発した10chのADおよび、無線機能を有するテレメトリユニットにより上下インナーからの計測値を取得し、日常生活における動作の計測、ならびに計測結果を教示情報としてニューラルネットワークによる動作の識別ソフトの開発を行った。今回の全身動作からの識別試験では、洗顔、掃除、歩行、静止状態の4動作について100%近い識別結果を得ることができた。 また、製作したインナーについて被験者を対象に官能評価を行い,モニタリングシステムにおけるセンサデバイスとしての機能評価以外にも気安さや利便性の面でも評価を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度新たに計測装置(ウェアラブルデバイス)として,感圧導電繊維を用いた上下インナーを製作した(インナーの製作は県内繊維メーカーと共同で実施)。本インナーの関節部8箇所、両肘、両肩、両ひざ、臀部には電極を取り付け、生活動作による各関節部(接触部)の電気抵抗変化を計測可能とした。また計測値の取得は、昨年度開発した三軸加速度センサモジュール、AD変換機能、無線機能を有する携帯可能なテレメトリユニットと組み合わせることで実施した。本年度、以上のシステムにより各日常生活の全身動作の計測が達成されたため、さらに次の段階として、動作計測結果ら日常生活動作の識別を試みた。三軸加速度センサモジュールによる腰部の3軸加速度と、インナーによる出力値をニューラルネットワークの教示データとして与え、学習後に各動作の識別試験を行った。結果、4種類の日常生活動作(洗顔、掃除、歩行、静止)についてほぼ100%の精度で識別が可能であった。これまで上インナーのみで識別を行った場合の識別率が92%どまりであったのに対し、極めて良好な結果が得られたと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度から25年度にかけて、テレメトリユニットの開発、感圧繊維素材の検討、配線素材の検討とインナーの作成、実際の日常生活動作における全身計測、さらに計測結果を用いた動作識別試験を行った。昨年度の課題として、認識動作が4パターンしかなく、モニタリングシステムの実用性としては不足している点が挙げられる。平成26年度はこの点について、計測点数の増設、認識アルゴリズムの改良・改善による認識可能パターンの増加が可能であると予想しており、これらを目的としてデバイスの改善、ソフトの製作を推進したい。また官能評価において、着心地に大きな問題はなかったが、そのデザイン性について大変不評であったことも問題と考えられる。ウェアのデザインの改善については県内の繊維メーカーと協力し、一般受けの良いデザインを検討し改善を行いたい。識別パターン増、およびウェアのデザインの検討後は、本年度が最終年度ということであり、研究成果の発表、公開を順次行う予定である。日本繊維機械学会、日本機械学会での発表、ならびに成果の論文化を進め、外部へ公開したいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
圧力センサの見積額が想定よりわずかに安価であったため、次年度使用額が764円発生した。 次年度の電子部品購入及び、5月に開催される学会発表における旅費に使用する
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