研究課題/領域番号 |
24700610
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
坂本 将基 熊本大学, 教育学部, 講師 (80454073)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 身体イメージ |
研究概要 |
模倣は,運動スキルを高めるための重要な行為だが,この能力には個人差がある.模倣能力の違いはいかにしてもたらされるのか,という問いに答えるために,本研究では「身体イメージの変容」という現象に着目した.これは,例えば,テニスや剣道などの道具を使用するスポーツ選手が,その道具の先端があたかも自分の手や指であるかのように感じることをいう.模倣をするときには,手本とする動きに自身の身体イメージを適合させることが重要であると考えられるため,本研究では,「身体のイメージが変容しやすい人ほど,模倣能力が高い」という仮説を立て,実験を行った. 今年度は,模倣能力と身体イメージの変容の間に相関関係が認められるのか否かについて検討した.模倣能力の評価には,肘関節の屈曲運動を用いた.被験者が眼前のモニター上に映る第三者の肘関節屈曲動作を模倣するとき,被験者に取り付けた関節角度記録システムで肘関節角度を測定することにより,模倣能力の正確性を評価した.一方,身体イメージの変容は,「ラバーハンド錯覚」から評価した.ラバーハンド錯覚を引き起こすために,被験者の手を衝立で隠し,被験者の目の前にはゴムでできた偽の手の模型を置いた.実験者が被験者の手と偽の手の対応する位置を同時に繰り返し触ると,被験者は隠されている自分の本当の手ではなく,偽の手の触れられた部分に触覚を感じるようになった. 得られた主な知見は,ラバーハンド錯覚が生じやすい人(身体イメージが変容しやすい人)ほど模倣能力が低いということであった.自身の身体イメージが簡単に変容してしまう人よりも,身体イメージが変容しにくい人のほうが自己の身体の状況を適切に把握できるのかもしれない.このことが,高い模倣能力につながった可能性がある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では,身体イメージの変容は「手」および「全身」を対象とする予定であった.しかしながら,実験器具の調達や実験条件の精査に時間を要したため,今年度は「手」の身体イメージの変容を検討することしかできなかった.
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今後の研究の推進方策 |
今年度得られた成果を基に,来年度は「全身」の身体イメージの変容を評価する予定である.また,今年度は模倣能力の評価に,肘の屈曲運動という非常に単純で馴染みのある運動を採用した.来年度は,被験者がこれまで経験したことのない新奇動作を模倣したときにも今年度と同様の知見が得られるのか否かについて検討を加える予定である. また,得られた成果は,関連学会で発表した後,国際雑誌に投稿する予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
身体イメージの変容をより多面的に評価するために,交感神経系の興奮に伴う精神性発汗を計測する装置を購入する.
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