研究概要 |
幼児を対象に両側上肢屈曲運動時の姿勢筋活動パターン、および下腿筋厚について検討した。被験者は、4-6歳の幼児総計78名からなる。被験者は、床反力計上で立位姿勢を閉足位にて保持した。警告刺激の1-3秒後に提示される視覚刺激(LED信号)に反応して、できるだけ早く両側上肢屈曲運動を開始し、その上肢を水平位で随意的に停止するよう指示した。試行は、10回とした。筋電図は、7つの姿勢筋(前脛骨筋 (TA), 腓腹筋, ヒラメ筋, 大腿直筋, 大腿二頭筋 (BF), 腹直筋, 脊柱起立筋 (ES))および三角筋前部線維 (AD)から表面電極を用いて記録した。ADの活動に対する姿勢筋活動潜時について分析した。腓腹筋とヒラメ筋の筋厚を超音波スキャナーを用いて計測した。 姿勢筋活動潜時は、ESに年齢による影響が認められた。ES潜時は、4歳児で最も遅く、年齢を重ねるにつれて有意に短縮した。4、5歳児ではADとの有意差がなく、6歳児ではそれよりも有意に先行した。成人ではADに対するBFの先行活動が認められている(Fujiwara et al., 2003)。しかしながら、4-6歳児では、その潜時は、ADに対して有意に遅延していた。また、成人では上肢運動時にTAの活動率が20%以下であるとされているが、6歳児ですら高確率で活動が認められた(約50%)。腓腹筋厚およびヒラメ筋厚には、有意な年齢による影響は認められなかった。また、下腿筋潜時との関連性は認められなかった。 本結果は、幼児における両側上肢屈曲運動時の姿勢制御において、体幹制御の発達が、大腿・下腿筋制御のそれに先行することを示している。また、6歳児では、大腿・下腿筋制御が、まだ発達過程にあることを示している。 今年度、予測的姿勢制御様式と下腿筋筋厚の発達様相を検討し、姿勢制御の発達研究に新たな知見を付け加えることができた。
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