研究概要 |
本研究において、両側上肢屈曲運動時の姿勢筋活動パターン、および下腿筋厚の発達的変化について検討した。 被験者は、4-12歳の子ども総計176名からなる。被験者は、床反力計上で立位姿勢を閉足位にて保持した。警告刺激の1-3秒後に提示される視覚刺激に反応して、できるだけ早く両側上肢屈曲運動を開始し、その上肢を水平位で随意的に停止するよう指示した。試行は、10回とした。筋電図は、7つの姿勢筋(前脛骨筋 (TA), 腓腹筋, ヒラメ筋, 大腿直筋, 大腿二頭筋 (BF), 腹直筋, 脊柱起立筋 (ES))および三角筋前部線維 (AD)から表面電極を用いて記録した。ADの活動に対する姿勢筋活動潜時について分析した。腓腹筋とヒラメ筋の筋厚は、超音波スキャナーを用いて計測した。 姿勢筋活動開始時間に関して、ES, BF, TAに年齢による影響が認められた。ESとBFは、年齢に伴って短縮し、TAは遅延した。上肢屈曲運動時にADに対する先行活動はESのみに認められ、BFは児童期後半であっても先行活動が認められなかった。また、上肢運動時にTAの活動率は、11-12歳児ですら高確率で活動が認められた(約50%)。腓腹筋およびヒラメ筋の筋厚は、年齢に伴い増加した。ヒラメ筋厚に対する腓腹筋厚の比率は4歳群に対して7-8歳群以降で有意に高く、さらに7-8歳群以降では隣り合う群において有意差が認められなかった。 姿勢筋活動の結果から、上肢屈曲運動時の姿勢制御において、体幹制御の発達が、大腿・下腿筋制御のそれに先行することが明らかとなった。また、児童期後半であっても、大腿・下腿筋制御が、いまだ発達過程にあることが明らかとなった。筋厚の結果からは、腓腹筋・ヒラメ筋の筋厚のいずれも年齢に伴い有意な増加を示すこと、特に、7-8歳群以降で腓腹筋の顕著な発達が認められることが明らかとなった。
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