原子力や交通(航空・鉄道)分野の事故防止には,事故の徴候を見落とさないようにしっかりと監視をすることが重要であり,これによって早期発見が可能となり,事故を未然に防ぐことができる。しかし,現実には監視をしているにも関わらず,事故(アクシデント)や事故の兆候ともいえるヒヤリ・ハッと(インシデント)が少なからず発生している。この監視におけるアクシデントおよびインシデントの原因を分析すると,ヒューマンエラーが最も多いことが指摘されている現状がある(稲垣,2008)。また,ほとんど発生しない事故やその徴候を監視することは単調な(飽きが問題となる)作業であるため,監視中の作業従事者に眠気や倦怠感が生じることが多く,現場における大きな課題のひとつとして指摘されている(Phillips,2000)。 そこで,本研究では単調な監視作業中に発生する眠気(覚醒水準の低下)や倦怠感などをコンピュータシミュレーション課題を用いて生じさせた。次に,悪化した心身の状態(眠気や倦怠感など)を回復させることによるヒューマンエラーを減少させるための「積極的休息」に着目し,その中でも身体活動を伴う積極的休息の効果を検討した。結果として,監視作業における積極的休息法としての身体活動は,低下した心理的および生理的覚醒水準を回復させる手段として有効であり,監視時のヒューマンエラー防止に発展する可能性が高いことが示唆された。
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