本研究は、現職中学校教員のダンス授業の指導力が向上するための資料映像の作成とその活用方法を考案することを目的とした。 創作ダンスの授業を実践するにあたって学習指導要領の中で重視されている「ひと流れ」や「ひとまとまり」が現職教員には理解されにくいことが調査よりわかったことから「ひと流れの動き」とは何か、そこに必要なダンス技能(動きの工夫の仕方)は何かを検討した。その結果、「ひと流れの動き」は、一番表したいことを中心とし、最初と最後にポーズをつけた一連の動きであること、そして「ひと流れの動き」はただの動きの組み合わせや連続だけでなく、テーマから得られるイメージと動きをかけあわせ、質感を伴う表現をすることが重要であることがわかった。そのため、より具体的に「ひと流れの動き」を把握するためには、テーマごとの「ひと流れの動き」を提案することが必要であった。そこで、教材「新聞紙を使った表現」を取り上げ、この教材における「ひと流れの動き」とはなにか、「ひと流れの動き」を引き出すために指導者がおさえるべきことはなにかを検討した。その結果、「ひと流れの動き」を検討するには、「連続性」「質感」「変化」の視点をもつことが必要であることがわかった。さらに「ひと流れの動き」を引き出すための指導方法として、指導者は新聞紙のもつ質感を十分に理解した上で多様な新聞紙の質感を経験できるような新聞紙の扱い方を提示すること、また指導言語と掛け合わせながら提示すること、多様な質感の新聞紙の動きを組み合わせて連続性を持たせることが必要であることがわかった。 以上の研究結果を集約した教材「新聞紙を使った表現」の指導案を提案し、中学校1年生に授業実践を行った。そして学習者による「ひと流れの動き」から、現職中学校教員が「ひと流れの動き」を把握し、ダンス授業の指導力を向上させることのできる資料映像の作成を試みた。
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