研究課題/領域番号 |
24700627
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
弓削田 綾乃 早稲田大学, オープン教育センター, 助教 (90432038)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 身体表現あそび / こどもと保護者 / 原発事故 |
研究概要 |
本研究は、福島県の東京電力第一原子力発電所の事故を受け、周辺地域の子どもを対象として、心身に効果的な“身体表現あそび”のワークショップの実践と検証を通して、プログラム開発を目指すものである。2012年度は、4~8月に、福島県K市での現状を調査した。おもに、教育および保育の関係者、キッズダンス教室の参加者等へのヒアリングと資料収集をおこなった。その結果をまとめると、以下のようになった。 1.場所・時間・道具・特殊技能を問わずに、体力作り・運動能力・情緒の安定等に貢献できる活動が求められている。 2.短期的なダンスに参加した幼児・児童とその家族では、運動欲求、心身の開放、自立での有効性が読み取れた。 3.家庭保育の乳幼児の保護者が、日常的なあそびに苦心し、将来の不安傾向が強い。家庭でも実施できるあそびの提案が必要と思われた。 これを受けて、8~9月に、家庭保育をしている乳幼児親子を対象としたワークショップ:身体表現あそび教室を実施した。事前に、身体表現・幼児教育を専門とする協力者らと連携し、予備的な試行を重ねた。参加者へのアンケート、ヒアリング、協力者へのヒアリング、映像等を分析した結果と考察は、以下の通りである。 1.参加者は、狭い空間、日常性等を活用したあそびでの満足度が高かった。これによって、身の回りから遊びのヒントを得ることへの気づきを促したと考える。 2.保護者の満足度が高かったのは、身体接触が多いものであった。 3.身体表現あそびを通して、親から子への、あるいは親自身への気づきを促すことになった。 4.保護者には、行動に対する理論的裏付けを求める傾向があった。 課題としては、日常生活への直接的効果を検証することがあげられる。成果公表は、舞踊学会定例研究会(6月)、舞踊学会第64回大会(12月)、『女子体育』6・7月号((社)日本女子体育連盟)でおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初は、幼児および児童を対象としたプログラムを考えていたが、現地での現状調査の結果を受けて、ワークショップの対象を乳幼児親子に変更した。それに伴い、プログラムも検討しなおす必要が生じたが、複数の身体表現・幼児教育の専門家を協力者として依頼するとともに、関連するワークショップを実施したり、見学したりするなどして事前準備を進められたため、当初の計画通り、2012年の夏から秋にかけてワークショップを実施することができた。ただし、プログラムの検証を目的として、POMSを活用した大学生への予備調査を予定していたが、本調査の対象変更に伴い、必要性が低いと判断したため実施しなかった。そのかわり、協力者と協同のワークショップを実践し、プログラムの検証を重ねることができた。 また、現状調査およびワークショップの分析についても、2012年度中に実施し、学会において段階的に成果発表をすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
前年度までの結果を受けて、次年度は、成果公表と成果還元を主な方向性と定める。具体的には、口頭発表および論文投稿、プログラム開発のDVD・資料作成と配布である。DVD・資料作成については、すでに前年度末から着手しており、2013年10月の配布を目指して遂行中である。 また、プログラムの検証を目的として、夏から秋にかけての現地でのワークショップ:身体表現あそび教室を実施する。それと同時に、前年度からの課題であった、本研究で提案するプログラムが、日常生活へどのような影響を及ぼすのかを検討するために、ワークショップ参加者への追跡調査をおこなう。これは、当初の計画になかったものだが、調査・検証のなかで、必要と判断されたため、新たに追加した。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費は、前年度の繰越金とあわせて使用する予定である。繰越の研究費が生じた状況としては、以下の2点があげられる。 まず、対象者を、幼児・児童としていた当初の計画から、現地の現状調査の結果を受けて、家庭保育をしている乳幼児親子に変更した。そのため、東京および現地での打ち合わせ費用、使用する消耗品費、人件費等にも若干の変更が必要となった。 次に、研究計画書作成の時点では、ワークショップ実施の支援者(学外の身体表現・幼児教育の専門家ら)を、「研究協力者」の区分で研究体制の人員に入れていた。しかしその後、所属大学では、本研究課題区分(若手研究B)での学外者による研究協力者を認めることが困難なことが判明した。そのため、支援者らへは「謝金」という形で、定額の謝金・旅費等を支払うことになり、当初の「人件費」と大幅に支出が異なった。 上記の理由で、次年度の研究費は、前年度の繰越を足して、当初の予定よりも増額になる。これを受けて、研究費を、学会発表、論文投稿、DVD・資料作成、現地でのワークショップおよび追跡調査の費用に使用することとする。増額分については、以下の使用を計画している。 DVD・資料の作成は、支出を抑えるため、可能な限り申請者がおこなう計画だった。しかし内容を鑑みると、必ずしも申請者のみでおこなうことは適切でないと思われる。そのため、DVD・資料作成の補助および外注費を増やす。また、当初の計画になかった、現地でのワークショップおよび追跡調査の費用も、新たに追加する。
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