研究課題/領域番号 |
24700628
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 岐阜聖徳学園大学 |
研究代表者 |
佐藤 善人 岐阜聖徳学園大学, 教育学部, 准教授 (20534663)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 共走 / 持久走 / 長距離走 / 態度 / 全身持久力 |
研究概要 |
初等・中等教育期の長い距離を走る運動は、小学校では体つくり運動領域の「持久走」として、中学校・高等学校では陸上競技領域の「長距離走」として実践されている。そのため主たるねらいは異なっており、その接続にカリキュラム上の問題があると考えられる。文部科学省では初等・中等教育期を6・3・3制としてではなく、4年間3つの括りで体育カリキュラム系列を考えており、12年間を見通したカリキュラムを考える必要がある。そこで本研究では、生涯スポーツを志向した「共走」概念を基盤とした長い距離を走る運動のカリキュラムを作成することを目的とした。特に小学校体育授業から中学校保健体育授業の接続に焦点を絞って研究を進めることとし、いわゆる「探求の時期」の長い距離を走る運動のあり方を検討することとした。 初年度は、小学校3校の高学年において「共走」概念を基盤とした長い距離を走る運動の実践を行い、さらに評価・測定を実施した。その結果、分析が終了した2校のいずれの学級においても、児童の好意的態度が有意に向上した。さらに全身持久力も1学級をのぞくすべての学級で有意に向上し、その1学級の向上にも有意傾向がみられた。また、中学校1,2年生おいても、先行実践を実施した。こちらも「共走」概念を基盤とした実践を依頼し、さらに質問紙調査と長距離走の記録を測定した。3月まで実践していたこともあり、まだ分析は十分ではないが、授業者にからは成果が上がったと報告を受けている。 これらのことから、「探求の時期」にある児童(小学校)には体力つくりを、生徒(中学校)には競争をというねらいが異なった学習を展開するのではなく、「共走」概念を用いた実践を共通して行うことは、児童・生徒にとって意味があることが確認されつつある。なお、研究の一端は、3月のランニング学会(東京学芸大学)で報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画したとおり、長い距離を走る運動の単元指導計画を作成し、校区が同一である複数の小学校と中学校に実践を依頼することができた。さらには、単元前後に質問紙調査、小学校では20mシャトルラン、中学校では長距離走のタイムを測定することができた。また、実践を進める過程で授業者と議論をし、こちら側が準備した単元指導計画をベースに、授業構成に当たって可能なことと実践できないことが明確となり、授業者の負担感を減少させ、かつ成果が上がる方法を模索することができた。 しかしながら、学校によっては外部の人材を受け入れることにやや抵抗感があり、当初予定していた授業校ではない小・中学校での実践を余儀なくされた。また受け入れ校においても、授業が進むまでは、その効果に半信半疑のところがあった。ところが、児童・生徒の様子や効果測定の結果を見ることで、実践に対する理解が深まった。 小学校では他の教科指導や行事の関係で、体育授業の進行が予定よりも遅くなったり、インフルエンザ等で質問紙調査等に欠損値が生じたりするなどした。しかし、一定のデータは得られ、研究は概ね予定通りに進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度は小学校の実践に特に力を入れて実践を試みた。その結果、好意的態度の向上と、全身持久力の向上がみられた。今年度は、小学校の実践をさらに充実させ、効果・測定を継続して実施するとともに、中学校における実践に力を入れて取り組みたい。 小学校で「共走」概念を基盤とした長い距離を走る運動を経験した小学6年生が中学1年生となった。その生徒が長い距離を走る運動に対して否定的態度をとらない実践を「共走」概念を取り入れながら模索し、効果・測定を実施する予定である。その際、作成した年間指導計画をベースとして、授業者と議論を深めながら、無理のない授業構成を心がける。 教育現場は多忙を極めているため、冬期の実践とはなるが、秋以降早めに授業校へ依頼をして、十分にこちら側の意図を理解いただき、負担感なく、そして児童・生徒にメリットがある授業づくりを進めていきたいと考えている。 なお、24年度の実践の成果は8月の日本体育学会(立命館大学)で報告する。今後も27年度まで毎年学会での報告を実施し、学術論文を執筆する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
書類上は次年度使用額が110,000円程度残っているが、すでに3月のランニング学会における発表の旅費としてその大半は使用している。やや残った研究費は、今年度研究が本格的に始動する中学校での実践の物品費を補充することで使用を計画している。 25年度は、大きな備品を購入する計画はない。実践に必要な学習カード用の用紙やグランド整備の器具が必要であり、30,000円程度使用する予定である。また、学会での発表を8月には日本体育学会(立命館大学)、3月にはランニング学会(大阪体育大学)で予定している。そのため、100,000円程度を支出予定である。その他、データを取る際に必要となる学生アルバイトの予算を400,00円、さらに論文執筆のため(抜刷作成等)の予算を40,000円程度予定している。
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