人間は行動する際,身体の方向を連続的に切り替える場面に遭遇することが多い.このような場面は,人間が環境から空間的・時間的に切り替える方向を強制(制約)される状況といえる.本研究では,人間が時空間的に切り替えざるをえない状況のときの動作の規則性・法則性を明らかにすることを目的とした.時間的な制約においては,切り替える時間の短縮(時間圧)することによって変動させた.空間的な制約においては,切り替える方向を発生させた.これらを解明する理論的背景として,離散力学系と連続力学系を混合した非自励系力学系理論を援用し,複雑な身体運動の現象を解明することである.2014年度には,2つの複合(融合)動作となる捕球・投球動作の実験測定をする計画であった.装置の構成は,電圧によって制御される脱磁式電磁石ボール投射装置である.この装置は,被験者に連続的にボールを投射するものであり,コンピュータによって時間間隔を正確に統御するものであった.測定する部位は,身体横断面における肩と腰の角度変位であった.データはランダムにばらついているのではなく,規則的なばらつきかどうかを検証するため,相関次元を算出した.また,これらのばらつきの範囲の比較として,肩と腰を変数とした多変量分散分析を行った.実際に,相関次元算出に必要となるデータ数は最低240試行とした.この240試行には,3次の系列が含まれている(2方向の刺激呈示であるため,刺激呈示をランダムにすると,全8種の系列で全ての試行が構成される).そのため,3次の系列を踏まえ,1つの時間間隔につき,32試行×8ブロックを実施した.時間間隔は15,24,30,32,34球/分の5種類とした.その結果,時間間隔の短縮に伴い,相関次元が上昇していくこと,その上昇の程度は時間間隔の逆数に適合することが明らかにされた.
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