本年度は、平成25年7月3日から7日までと10月2日から10月6日まで、平成26年2月7日から11日までの2回、Bio Integral Psychotherapy School(BIPS)のセラピストトレーニングに参加し、参与観察を行った。また講師として来日した、Biosynthesisを専門とし、BIPSのメインディレクターであるルーベンス・キグネル、Biosystemicsを専門とするモーリッツオ・スチューピジアへのインタビュー調査を行った。昨年度からの調査と併せて、BIPSの全体像が大まかながら明らかとなった。また身体心理療法における臨床の知に関しても、研究者自身による参与観察により、調査は深まりを見せ、本研究の特徴の一つである「身読」の基盤が作られた。調査、テキスト読解から、Biosynthesisの理論においては思考、感情、身体の統合が重視され、思考の領域に属すると考えられる言葉は感情と身体と連関していなければ、他者へと届く言葉にはなりえないとされていることが明らかとなった。 また昨年度の研究から明らかとなった身体心理療法の各流派の差異を超えて重視されているセラピストの「存在(プレゼンス)」の問題を教育領域に導入する試みとして、「『しない』をする教育―身体心理療法ハコミの逆説の原理と技法から―」(『ホリスティック教育研究』vol.17)という論文にまとめた。ここでは、従来から重視されつつも触れられてこなかった教育者の「人間性」という概念を、「存在(プレゼンス)」として理解することにより、それを教育者の力量、技術の問題として捉えることを可能にし、また育成可能なものであるとした。
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