研究概要 |
近年、メンタルヘルスの悪化が社会的問題となっている。うつ病等の気分障害総患者数は、1996年が43.3万人だったのに対し、2008年には104.1万人と12年間で2.4倍にも増加している(厚生労働省大臣官房統計情報部, 2009)。このようななか、精神疾患が5大疾病の一つとして扱われるに至り、その対策が急がれている。最近では、運動がうつ病患者の抑うつ度を改善する(Mead, 2009; Rethorst, 2009)ことから、これらの問題を解決する手段の一つとして運動が注目され始めている。しかしながら、運動が精神面に効果を及ぼすメカニズムの解明が不十分なためか、運動は精神疾患の治療として広く普及していないのが現状である。 本研究では、運動が精神面に及ぼすメカニズムについて、これまでの研究とは異なる視点から検討する。近年の脳科学研究では、感情は身体状態を総合的に評価し、ホメオスタシスの維持に貢献する機能を持つと考えられている(Craig, 2009)。このような機能の中心を担うのが前部島皮質と考えられており、身体状態を統合して主観的感情を生成すると考えられている。我々は先行研究において、運動トレーニングが前部島皮質の灰白質量に影響を及ぼし、かつ、メンタルヘルスを改善することを示した(Gondoh, 2009)。そこで我々は、運動によるメンタルヘルス改善のメカニズムとして、前部島皮質の機能改善があると仮説を立てている。本研究では、運動が前部島皮質の機能に及ぼす影響を検討するため、前部島皮質の機能を評価する方法を開発し、運動が前部島皮質の機能に及ぼす影響を検討する。 平成24年度は、前部島皮質の機能を評価するため、感情を表現した身体活動の動画を作成した。今後、この動画を用いて、前部島皮質の機能をfMRIを用いて測定する予定である。
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