研究課題/領域番号 |
24700638
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 北海道教育大学 |
研究代表者 |
小谷 克彦 北海道教育大学, 教育学部, 講師 (40598794)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 指導者 / 葛藤 / 質的研究 |
研究概要 |
平成24年度は,まず,本研究課題の下位課題である「運動部活動における指導者の葛藤体験に伴う価値観の変化」についての検討を行った.研究代表者がこれまでに行ってきた指導者が経験した葛藤体験に関する調査(自由記述式質問紙調査,面接調査)の記述データを用いて,成長に伴う葛藤体験という視点から改めて検討を行った.そこでは,指導者の価値観の変化に注目し,そのような変化をもたらす葛藤状況,そしてそこで生じた価値観の変化,および生徒との関わりの変化について整理することを目的とした.その結果,それぞれの観点においていくつかのカテゴリーを抽出することができた.また,それぞれの変化について,ポジティブな変化だけでなくネガティブな変化も明らかにすることができた.本調査では,「転機となった葛藤体験」について調査したものであり,最終的にはポジティブな変化を伴う体験である.つまり,ネガティブな変化からポジティブな変化へつながる連関について検討する必要があるという新たな課題が明らかになった.この点については平成25年度に継続して取り組んでいく. また,海外での指導者研究の動向を調べるために,海外での情報収集を実施した.その結果,近年では少なくなってきた指導者のバーンアウト研究がみられるようになっただけでなく,「指導者教育」といった観点での研究が多くなされていた.本研究課題は「指導者教育」といった位置づけとなる課題であり,本研究課題の意義を改めて確認することができた. さらに,本研究課題で主に用いることになる質的研究について,国内外の学会にて情報収集を行った.近年,質的手法を用いた研究が多く,その手法も多種多様となってきている.本研究課題に適した研究方法についての検討を行うことができた.また,本研究課題で用いることを検討している手法を用いた研究を国内の学会にて発表を行い,研究方法についての検討を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度に実施する予定であった「運動部活動における指導者の葛藤体験に伴う価値観の変化」については実施し,価値観の変化について明らかにすることができた.そして,価値観の変化と生徒との関わり方を明確にするだけでなく,それらの関連についても検討する必要性があるという今後の課題も明らかになった.さらに,研究方法として質的研究の手法に関しても,情報収集ができ,今後の研究において用いる研究方法の見通しを立てることができた.また,海外における指導者研究の動向についても情報収集をすることができ,「指導者教育」という観点で行われている研究が多く,本研究課題の意義および可能性を改めて確認することができた.以上のことから,本研究課題を取り組む上で,初年度の段階としては順調に進展していると言える. しかしながら,平成24年度から取り組み出す予定であった「成長をもたらす葛藤体験の心理的過程」については実施し始めることができなかったことは反省点である.
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度に実施した「葛藤体験に伴う価値観の変化」で明らかになった課題についての検討を行い,その研究成果を学会および論文化して発表を行う.学会発表に関しては,アメリカで行われる「Association for Applied Sport Psychology 28th Annual Conference」で発表を行う予定である.その他にも国内の学会においても研究成果を発表する予定である.さらに,この課題は,3つめの研究課題である「葛藤体験による成長が指導活動に及ぼす影響」に関して方向性を明確にする知見を見出すことができると思われる.そのため,平成24年度に実施した研究の課題について再度精査していく. また,平成25年度は,「成長をもたらす葛藤体験の心理的過程」について研究を取り組む.被験者となる指導者への面接調査を始める.面接調査は数回ではなく長期間に及ぶものになるため,面接調査の途中であっても,その内容に関して検討を平行して始める.また,事例の内容の分析に関しては,研究協力者とともに検討を進める.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の当初の予定では,面接調査や投影法によるデータ収集を実施し,その内容を研究協力者とともに検討することであった.しかし,実際の取り組みでは,既存データによる再検討を行うに留まり,新たなデータを収集することはできなかった.そのため,面接データによる事例検討や投影法の分析・助言のための研究協力者への謝金,面接協力者への謝金,さらにはそれらを実施するための旅費を使用することがなかった.また,研究成果発表のために計画してた英文校閲や論文印刷等の経費を使用する段階まで研究を進めることができなかった.以上の理由のために繰越金が生じた.平成24年度に実施できなかった取り組みは,平成25年度に行う予定であり,繰り越した研究費はそのために使用する予定である. 平成25年度の研究費の使用計画は以下の通りである.まず,物品に関しては,心理臨床関係の図書および質的研究関係の図書を購入し,情報収集を図る.また,研究を実施する上で必要となる心理検査や文具,記録に必要な用具の購入に使用する.旅費に関しては,国内外の学会にて研究成果を発表を行うため,その費用として使用する.海外の学会に関しては,6月と10月に2度参加・発表する予定である.人件費に関しては,研究協力者からの指導助言に対する謝金,そして面接協力者への謝金として使用する予定である.その他に関しては,情報収集および研究成果発表で参加する学会の参加費として主に使用する予定である.
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