研究課題/領域番号 |
24700639
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
明石 卓也 岩手大学, 工学部, 准教授 (50403655)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | スポーツバイオメカニクス / コンピュータビジョン / ヒューマンセンシング / 画像認識 |
研究概要 |
平成24年度は,すでに申請者が提案した顔パーツセンシングアルゴリズムをアスリートの動作センシングに適用するため,既存アルゴリズムの効率化と基盤ソフトウェアとなる動作センシング処理ライブラリの開発に主眼を置いて,以下のとおり研究を進めた. 1. 実際に人物のさまざまな手の動作を分析し,アルゴリズムを効率化し,動作センシングに適用させる. 2.アルゴリズムの評価・検証を行いつつ,センシング処理ライブラリの開発・整備. 最初の1については,取得した画像データから人物の手領域の動作を解析することによって,既存アルゴリズム(顔パーツに特化したセンシングアルゴリズム)の利用可能な部分と改良が必要な部分を明確化し,アルゴリズム全体の効率化を図った.画像データの取得は,可視光用の通常のカメラを用いた.取得された画像データを解析した後,従来の顔パーツセンシングアルゴリズムを動作センシングに適用するため改良を継続している.顔パーツは顔上に存在するため,背景は一様に肌である.したがって顔パーツのセンシングは比較的簡単である.本研究では,既存のモーションキャプチャ技術では実現困難な実環境における動作センシングを背景を考慮して実現することを考えている.なお,既存のモーションキャプチャシステムの使用は狭い室内空間のみに限られているため,機動性が高く,高精度なセンシングは困難である.その意味においても本研究の意義は大きいものと考える.2については,1で得られたアルゴリズムの評価・検証を行いつつ,動作センシングシステムの基本的なセンシングモジュールとしてライブラリを開発する.動作のデータが足りなければ,必要に応じてデータ取得も実施し,適宜アルゴリズムの改良を進めていく予定である.以上の研究の成果について,複数の国内会議において発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は,すでに提案した,顔パーツセンシングアルゴリズムを基本として,新たなアルゴリズムを提案した.この顔パーツセンシングアルゴリズムでは,顔の各パーツの変化の特徴を詳細に分析することによって,システム全体において計算コスト高い部分を効率化が可能となる手法である.この顔パーツセンシングアルゴリズムをアスリートの動作センシングに適用するため,既存アルゴリズムの効率化と基盤ソフトウェアとなる動作センシング処理ライブラリの開発に主眼を置いた.まず,研究の初期段階として,実際に人物のさまざまな手の動作を分析し,アルゴリズムを効率化した. 研究成果として,手領域のセンシング方法として,以下の3つの新しいアルゴリズムを提案した. 1.手領域のエッジ変化量と腕の太さの変化を利用した手領域の非侵襲なセンシング 2.進化的手法を用いた手領域の非侵襲なセンシング 3.進化的手法を用いた指先の非侵襲なセンシング それぞれの手法を検証するために,既存の設備を利用して動作中の手領域を撮影し,実験データを収集した.研究成果についても,国内会議において複数回発表を重ねている.以上の理由から,おおむね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は,主として具体的な動作センシングライブラリの開発・実装に重点を置き,以下のとおり進める 1.動作センシングアルゴリズムの洗練化 2.実際の人物の動作をチェックするシステムの構築 1については,前年度までに開発された動作センシングライブラリの洗練化を行う.必要に応じてデータの取得やアルゴリズムの改良を実施する.さらに,平成24年度では,到達できなかったアスリートのスポーツ活動中の動作のセンシングに取り組む.そして,その性能評価テストを行う.評価では,実際に市販のモーションキャプチャシステムによって取得されたデータと提案する手法によって得られたデータを比較することによって行う.90%以上のセンシング精度の達成が目標である.前年度で想定した人物の動作以外の種類の動作に対しても検証し,適宜アルゴリズムを改良する.必要であれば,アルゴリズム全体を再考する.アルゴリズムを改良した場合,逐次ライブラリへ反映させる. 次に2については,1と平行して,1の段階で改良されたライブラリを利用する形で実際の動作チェックシステムへの応用を試みる.具体的には,アスリートと被験者の動作をセンシングし,関節の動きなどの動作データを比較することで,被験者に動作の修正箇所を指摘するようなチェックシステムを構築する.チェックシステムの構築中に常に問題点・改善点などを検討し,開発にフィードバックさせてより完成度の高いシステム構築を目指していく.
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次年度の研究費の使用計画 |
調査・研究旅費に関して,アメリカ合衆国ではなく,アジア圏の国際会議に出席した.消耗品費に関しては,既存設備であるファイルサーバの容量に余裕があるため,大容量ハードディスクは平成25年度に購入することとした.また,当初想定したトナーなどの消費量が少なかった.以上の理由により,残額が生じた. 平成25年度では以下の使用を計画している.調査研究旅費として,関東および関西方面における調査・研究を兼ねた成果発表(3日間×4,40万円),アメリカ合衆国における国際会議での調査・研究を兼ねた成果発表(5日間×1回,30万円)を予定している.また,研究成果の論文投稿料(2件,20万円)や大容量ハードディスク(1台,9万円),プリンタトナー(各色1個,7万円)などの購入を予定している.研究補助の人件費として大学院生(2名,100万円)に対して研究協力謝金を支出する予定である.また,屋外におけるデータ収集,オンライン実験のため,ノートパソコン(1台,20万円)の購入を予定している.なお,研究経費が不足する場合は,運営交付金によって補填する予定である.
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