研究課題/領域番号 |
24700642
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
宮田 香織(江田香織) 筑波大学, 体育系, 特任助教 (30612478)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | アスリート / 心理的発達 / 競技力向上 / 対話的競技体験 / パフォーマンス |
研究概要 |
本研究は身体に注意を向け,様々な感覚や感情等と向き合う体験様式である対話的競技体験がアスリートの競技力向上と心理的成長の両側面の発達を促進するという仮説を検証することを大きな目的としている.すでに対話的競技体験と心理的成長との関連については確認してきており,本年度は対話的競技体験と競技力向上との関連を明らかにすることを主な目的とした.そこで,すでに作成していた対話的競技体験尺度を再検討し,質問項目の表現を修正するとともに,信頼性・妥当性の検討を行った.さらに,集団競技のあるチームに対してグループ箱庭 (箱庭に関する説明は「現在までの達成度」に記載)を用いた介入を行い,対話的競技体験と競技力向上との関連について検討した. 対話的競技体験尺度は本研究の主軸となる対話的競技体験の深まりを測定した尺度である.この尺度はすでに作成していたが,表現の問題や信頼性・妥当性の検討が十分ではなかった.そこで,これらについて再度検討することによって,尺度としてより精度の高いものになったと言える. また,これまでの研究では,個人競技における対話的競技体験を中心に検討してきたが,集団競技においても,身体を通して自身および他者との対話を促進することで,自己理解・他者理解が促される.さらに,そのような体験によって,チーム内のコミュニケーションも促進され,競技力の向上につながることが予想された.本年度は特にこのことについて検討した.その結果,グループ箱庭を用いた介入によって,対話的競技体験が促進されることで,チームワークおよび競技力が向上することが確認された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り,本研究の主軸となる対話的競技体験尺度の再検討と集団競技チームに対してグループ箱庭を用いた介入を行い,集団競技における対話的競技体験と競技力向上について検討することができた.今後は,介入を行った対象者に対してインタビュー調査を行い,対話的競技体験の促進と競技力向上との関連について,対象者の体験世界から考察していきたいと考えている.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,対話的競技体験を促進し,競技場面へと般化させるメンタルトレーニングプログラムについて検討していく予定である. 所属大学である筑波大学では,毎年スポーツクリニック・メンタル部門主催で,メンタルトレーニング講習会(週1回・2時間・10週間のプログラム)を20年間行っている.本講習会は,参加者を20名程度とし,参加希望者を募っている.基本的に,参加者は自発参加である.本講習会はまた,心理面の強化を目的とする心理技法の提供だけに留まらず,技法を通して自分自身の競技体験を振り返る作業を行うとともに,グループ箱庭や描画を取り入れ,内的変容を視野に入れた取り組みを行っている.つまり,本講習会の内容は受講者が身体を通して自身と向き合う対話的競技体験を深める機会となっている. 本講習会は技法指導よりも実習を重視ししているが,講習会という限られた時間では受講者がメンタルトレーニングで体験した内容を競技場面に般化させるところまで関わることはできない.しかし,これまで本講習会に参加した受講者の中には,講習会中に競技への取り組みを変化させ,講習会終了後,飛躍的に競技力が向上した者もいた.これらの選手はメンタルトレーニングにおいて対話的競技体験の体験様式を身につけ,講習会終了後も主体的に対話を深めていったものと考えられる. これまでの受講生の日誌や箱庭および描画作品などのデータを分析し,さらに過去の受講者にインタビュー調査を行うことによって,メンタルトレーニングにおいて対話的競技体験を促進し,競技場面に般化させる要因や機序について検討する.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は本年度行う予定であったインタビュー調査をさらに追加して行う予定であり,そのための旅費および謝金のための予算が必要となるため,平成25年度の繰越額が生じた.また,この研究について学会発表を行うためにも,この予算を次年度使用する予定である.
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