本研究は,有限要素法を用いてスイング中におけるクラブの挙動およびクラブによってインパクトされたボールの挙動を高い精度で表現できるシミュレーションモデルを構築するとともに,そのモデルを用いてクラブの挙動やボールの打ち出し(速度,角度,スピン)を指標としたクラブの性能評価方法を開発することを目的としている. 本年度は,昨年度構築したシミュレーションモデルをもとに異なるスイングを作成するとともに,炭素繊維強化プラスチック(CFRP)製シャフトの有限要素モデルを構築して,これを異なるスイングに適用することによって,クラブの力学特性やスイング特性がスイング中のクラブ挙動に及ぼす影響を調べることを中心に研究を行った. まず,ロボットを用いた実験をもとに昨年度構築した2種類のスイングから,スイングを構成するロボットの上肢,手首,シャフト軸まわりに相当する各回転軸の運動を利用することにより,インパクト時のヘッドスピードを等間隔(30~45 m/sを4段階)に表現できるスイングを作成した. 次に,CFRP製シャフトのモデルを構築するために,シャフトの積層構成を表現する形状モデル化の方法や,プリプレグシートの仕様から材料モデルの物性値を決定する方法を提案した.そして,シャフトの曲げおよびねじり試験の結果と,構築したモデルの解析結果とを比較して,モデルが高い精度を持つことを確認することにより,モデル化の妥当性を検証した.また,複数のCFRP製シャフトに同様のモデル化手法を適用し,これらが同等の精度を持つことを確認した. 複数のスイングに対して異なるCFRP製シャフトを適用してシミュレーションを行い,実験からの取得が困難なスイング中のクラブ挙動を定量的に比較できるようにするとともに,スイング間やシャフト間での違いを調べることにより,クラブの性能評価を行う上で有用となる指標を提案することができた.
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