本研究の目的は,次の2点である。(1)学校管理下のスポーツ事故,とくにその死亡事例と障害事例について,過去29年間の事例を数量的に整理したうえで,競技種目別に事故実態を解明・比較し,安全対策の要点を導出する。(2)得られた知見を日本語と英語にて,迅速にウェブサイト上に公開し,一刻も早い安全対策の検討を国内外に向けて呼びかける。これらの目的を達成するために,今年度は具体的に「スポーツ活動時の頭頸部障害事故に関する分析」,「水泳活動時における頭頸部事故の分析」,「得られた知見の発信」に重点的に取り組んだ。 まず,「スポーツ活動時の頭頸部障害事故に関する分析」では,頭部と頸部の負傷によって後遺症が残った事例を集約し,競技別,性別,学年別,大会/練習別,死因別等に分類した。競技別の分析からは,柔道やラグビーにおいて頭頸部の障害事故率が高いことが明らかとなった。学年別の発生状況については,競技によって異なることがわかった。また,柔道やラグビーに次いで事故率が高い水泳については,「水泳活動時における頭頸部事故の分析」として,授業ならびに部活動の事故の発生機序や指導のあり方について,詳細な分析をおこなった。 最後に「得られた知見の発信」については,過年度の死亡事故に関する研究成果を含めて複数本の学会発表(医学系や体育学系が中心)をおこない,合わせてウェブサイト上で記事を公開し,多くの反響を得た。
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