一般学生バスケットボールプレーヤーを対象とした「状況判断型アジリティトレーニング」の開発と実践を目的として、前年度に考案したトレーニングプログラムの実践を行い、そこで得られた動作時間と動作全体の分析、トレーニング実践前後の実際場面での動作分析からトレーニング効果を検証した。 1)状況判断型トレーニングにおけるステップワークの検討 考案した状況判断型トレーニング(4つの方向変換地点を設けたダイヤモンド型コースをサイドステップで移動)の実践前後における動作時間、動作特性(ステップワーク)について検討した。実践後の全体動作時間、後方へのサイドステップからの方向変換時間は、実践前よりもやや短くなる傾向がみられた。全体動作時間の短縮については、サイドステップの歩幅が広がって方向変換地点間の歩数が減少したこと、方向変換時間の短縮については、素早く体幹の向きを変えて次の1歩を踏み出すといったような動作へと変化したことが影響していると考えられた。 2)トレーニング実践前後の実際場面におけるステップワークの検討 特に、1対1のディフェンス場面における方向変換時間(後方へのサイドステップからオフェンスの進行方向に合わせて方向を変換して1歩を踏み出す時間)が短くなるという傾向がみられた。また、実践前よりも、方向変換時のステップ幅が広がり、方向変換に要するステップ数が減少した被験者もみられた。一般学生プレーヤーを対象とした実際場面での動作特性に基づいたトレーニングプログラムの開発においては、既存のプログラムの繰り返しだけではなく、同じプログラムであっても状況判断を伴う場面を想定した応用を加え、単なる動作時間の短縮だけではなく、ポイントを絞った動作改善策(方向変換時のステップワーク等)を提示することによって、実際場面への即時的還元につながる可能性が示唆された。
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