研究課題/領域番号 |
24700652
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研究機関 | 埼玉県立大学 |
研究代表者 |
八十島 崇 埼玉県立大学, 保健医療福祉学部, 講師 (00435091)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 方向転換能力 / 股関節 / 筋機能 / 筋力 / RFD(力の立ち上がり率) |
研究概要 |
サッカーやバスケットボールなどの球技スポーツでは,方向転換能力すなわち素早く動作を開始し効率良く適切な方向へ移動できる能力が必要とされる。また,方向転換動作は,股関節周囲筋が中心的な役割を果たし下肢の運動を遂行していると考えられる。しかしながら,股関節筋機能が方向転換能力にどのように関係しているのか明確にされていない点が多い。本研究では,股関節筋機能と方向転換走のタイムとの関係(平成24年度),股関節筋機能と方向転換時の動作変容との関係(平成25年度)を検討し,方向転換能力と関係する股関節筋機能について明らかにすることを目的としている。 今年度は,19名の大学サッカー経験者を対象に股関節筋力と方向転換走の計測を行った。股関節筋力は,徒手筋力計で伸展及び外転の等尺性筋力を2試行ずつ計測した。測定肢位は,股関節伸展が腹臥位で股関節屈曲伸展中間位(0°),膝関節伸展位,外転が側臥位で股関節内外転中間位(0°),軽度伸展位,内外旋中間位(0°)及び膝関節伸展位に設定した。方向転換走は,2回の180度の方向転換を行うプロアジリティテストと1回の180度の方向転換を行う5-5CODテストを2試行ずつ行った。それぞれ指標ともに2回のうちの良い方を評価値として採用した。また,伸展・外転筋力については,最大筋力(MVC)の他に単位時間当たりの筋力発揮の程度を表す力の立ち上がり率(rate of force development; RFD)の最大値(RFDmax)も評価した。 その結果,外転筋力ではMVCに加えてRFDmaxでも5-5CODテストのタイムとの間に有意な負の相関関係を認めた。この結果から,方向転換能力には素早く力発揮する能力を反映するRFDも関係している可能性が高いと推察され,今後その機能的特性についてさらに検討する必要があると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度の検討から,方向転換能力発揮には,最大筋力だけでなく力の立ち上がり率(RFD)も関係することが推察された。しかしながら,上述の知見をより明確なものにするためには,被験者をさらに依頼して検討を積み重ねていく必要があると考えられた。そのため,今年度実施した実験(股関節筋力及び方向転換走の計測)については,次年度予定している実験計画と並行して,引き続き実施していくことを予定している。加えて,先行研究では力の立ち上がり率(RFD)の評価を最大値(RFDmax)だけでなく力-時間曲線をもとに様々な観点から行っている。本研究でもRFDについてより多面的に解析を行い,この指標が有する機能的特性についてさらに解明していくことを考えている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度(平成25年度)は,股関節筋機能と方向転換時の動作変容との関係について検討していく。股関節筋力は,伸展及び外転の等尺性筋力を徒手筋力計で計測する。方向転換走は,180度の方向転換を行うプロアジリティテスト及び5-5CODテストを行っていく。すべての試技は,デジタルビデオカメラを側方に設置して撮影する。試技実施時には,被験者の左右の肩峰・大転子・膝関節裂隙及び外果にマーカーを貼付し,各ランドマークが後日行う解析で分かりやすいようにしておく。解析は動作解析ソフトを使用して行い,方向転換動作を「停止局面」(接地から膝関節最大屈曲まで)と「加速局面」(膝関節最大屈曲から離地まで)の2局面に分け,接地時間とともに各ランドマークに貼付したマーカーをもとにして接地時の股関節・膝関節屈曲角度を評価する。さらに,体幹軸(肩峰から大転子)と地面のなす角度を体幹傾斜角度として局面ごとに評価する。なお,股関節伸展及び外転の等尺性筋力については,今年度の実験と同様に最大筋力(MVC)と力の立ち上がり率(RFD)の両面から評価を行っていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度研究費から次年度使用額が生じた理由は,購入した研究機材(光電管(RaceTime2; MicroGate社製))が申請時の想定よりも安価で購入できたためである。また,「現在までの達成度」の項目にも記述したように,今年度実施した実験を継続して実施する必要性が生じた。そのため,次年度の研究費については,当初予定の使用計画とともにこの実験に協力していただける被験者への謝礼を考慮しながら執行することを考えている。
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