サッカーやバスケットボールなどの球技スポーツでは,素早く動作を開始し効率良く適切な方向へ移動できる方向転換能力を必要とする。この方向転換能力の発揮には,股関節周囲筋が中心的な役割を果たしている可能性が高い。しかし,股関節筋機能が方向転換能力にどのように関係しているのか明確にされていない。平成25年度は,股関節筋機能と方向転換時の動作変容との関係を検討した。 被験者は,25名の大学サッカー経験者とし,股関節筋力と方向転換走の測定を行った。股関節筋力は,徒手筋力計で伸展および外転の等尺性筋力を2試行ずつ計測した。測定では,被験者に対して「全力かつできるだけ素早く力発揮」するよう指示した。両筋力測定から,最大筋力の他に単位時間当たりの筋力発揮の程度を示す力立ち上がり率(rate of force development; RFD)の最大値(RFDmax)を評価した。方向転換走は,180度の方向転換を1回行う5-5CODテストを2回実施した。試技は,デジタルビデオカメラを被験者の側面に設置して撮影した。撮影した映像は,動作解析ソフトを使用し方向転換動作時の接地から離地までの接地時間を測定した。さらに,接地時間を「停止局面」(接地から膝関節最大屈曲まで)と「加速局面」(膝関節最大屈曲から離地まで)に分け,各局面の時間も測定した。各局面における股関節・膝関節の屈曲角度の変化についても評価した。その結果,5-5CODテストの加速局面の時間は,伸展および外転のRFDmaxとの間に有意な負の相関関係を認めた。これらのことから,方向転換能力にはRFDのような素早く力発揮する能力が関係する可能性が高いと推察された。今後さらに,方向転換動作時の動作変容と股関節周囲筋の機能的特性について,詳細に検討していく必要があると考えられた。
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