研究課題/領域番号 |
24700662
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
瀬戸 邦弘 上智大学, 文学部, 講師 (40434344)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | スポーツ文化人類学 / 文化人類学 / 体育史 / 民俗学 |
研究概要 |
2012年度は日常・祝祭における伝統的身体の現状調査を開始し、岡山市真言宗西大寺観音院、岡山市沖田神社・道通宮、岡山市天台宗金山寺、香川県善通寺市真言宗善通寺にて伝統行事“会陽”の参与観察を実施した。また岩手県下の裸祭り調査の準備として関係者へのインタヴューも実施している。これら事例は全国に知られる会陽・裸祭りの実施地域であり、本研究における事例研究実施地域としては最適の場所といえよう。 参与観察に際しては①調査地に伝わる言説の収集、②祭りの画像・映像収集、また申請者が行事を通して持った疑問等を③インフォーマントにインタヴューすることに成功している。西大寺は現行の裸祭りとして世界的に知られる事例、善通寺は裸祭りが取りやめになった事例、金山寺は祭り直前に起きた火災にて本堂が消失した後の実施事例、沖田神社・道通宮は子供が参加する会陽として知られる事例となり、調査した四件がそれぞれに異なる特徴を有し、さまざまな状況下で実施される伝統行事の在り様に触れることが叶い、重要なデータを得ることができた。 本調査においては伝統的な身体の認識、風習など当該地域で共有される身体観の詳細などのデータ収集を行うためにIC録音機を用いた音声記録、またデジタルビデオ、デジタルカメラにて映像・画像の記録を行ない無形文化のアーカイブ化を進めている。帰京後は参考文献を渉猟し、当該地域、および日本の伝統的な身体・スポーツ文化を網羅的に考察し、先行研究の蓄積を加味して、日常および祝祭世界での伝統的身体の考察を進めているところである。また本事例への理解を深めるために、近世~近代移行期の身体にも関心を払い比較研究を行うことで前近代の身体観を明らかにする準備も進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
祭りの行われる時期に①岡山市真言宗西大寺観音院、②岡山市沖田神社・道通宮、③岡山市天台宗金山寺、④香川県善通寺市真言宗善通寺にて、伝統行事“会陽”の参与観察が行われ、また岩手県下裸祭り調査の準備として関係者へのコンタクトも取ることができたのは大きな成果と言える。これら事例は全国に知られる会陽・裸祭りの実施地域であり参与観察を通して重要な情報を得ることができたと考えている。 また、参与観察では申請者が予期していなかったような出来事(金山寺本堂の消失)などが起きたが、そのような逆境の中で行事を実施するに当たり、平素は可視化されないコミュニティの力強い姿が確認でき、結果として行事の本質を理解する上で重要な知見を得ることができた。金山寺の例のようなドラマティックな場合ばかりでないが、調査した四例にはそれぞれに異なる特徴が見られ、参与観察によってのみ得られる“活きた文化”に触れることが叶い、今後の研究につながる重要なデータを得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
2013年度は昨年度の成果を踏まえて伝統的身体の現状調査を継続し、①岡山市真言宗西大寺観音院、②岡山市沖田神社・道通宮、③岡山市天台宗金山寺、④香川県善通寺市真言宗善通寺にて伝統行事“会陽”の参与観察を引き続き行う予定である。昨年度は日程が重なり実施叶わなかった岩手県下の裸祭り調査を実施する。岩手には特徴的な裸祭りが多く継承されており、その参与観察とそれを通したデータの収集、およびアーカイブ化を行うことになる。尚、岡山や岩手の事例は全国に知られる会陽・裸祭りの実施地域であり、本研究における事例研究実施地域としては最適の場所といえよう。 参与観察に際しては昨年度に引き続き①調査地に伝わる言説の収集、②祭りの画像・映像収集、また申請者が行事を通して持った疑問等を③インフォーマントにインタヴューすることになる。 その際には伝統的な身体の認識、風習など当該地域で共有される身体観の詳細などのデータ収集を行うためにIC録音機を用いた音声記録、またデジタルビデオ、デジタルカメラにて映像・画像の記録を行ない無形文化のアーカイブ化を進めている。帰京後は参考文献を渉猟し、当該地域、および日本の伝統的な身体・スポーツ文化を網羅的に考察し、先行研究の蓄積を加味して、日常および祝祭世界での伝統的身体の考察を進めているところである。また、本事例への理解を深めるために近世~近代の身体(移行期の身体(江戸~明治」にも関心を払い、比較研究を行うことで前近代の身体観を明らかにする予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
調査地(岡山、岩手等)での参与観察を積極的に実施し“活きた文化”を収集することを目指す。そのため、祭りの実施時期、その前後に赴き詳細なデータ収集が行われる予定である。また、比較データ収集や研究成果発表のための学会発表や、学会誌への論文投稿なども検討されており、参与観察、学会発表、論文投稿などしっかりした研究計画の下、着実な研究費使用計画実施に余念はない。
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