研究課題/領域番号 |
24700665
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 日本女子体育大学 |
研究代表者 |
前川 剛輝 日本女子体育大学, 体育学部, 助手 (50336351)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 高所トレーニング / 低酸素トレーニング / 赤血球 / モノカルボン酸トランスポーター |
研究概要 |
本研究では,高所・低酸素トレーニングによる「増血を伴わない運動パフォーマンス改善」に関する血液学的背景を明らかにすることを目的とした.低酸素刺激によって血液のpH調節に関わる赤血球膜タンパクの変化が,血液の量的変化を伴わない運動パフォーマンスの改善に貢献しているのではないかと考えている.先ず,高所・低酸素トレーニングによって血液のpH調節に関わる赤血球膜タンパクが,どのような影響を受けるのかを検討することを第一の目的とした.そしてそれら変化が運動パフォーマンスに与える影響を検討することを第二の目的とした. 研究実施の初年度である今年度は,先ず測定システムの構築とプレテストを行った.プレテストとして,スポーツ競技選手を対象に自然の高所環境を利用した短期間の高所トレーニングを行わせ,その前後で血液学的検討と運動パフォーマンスの検討を行った.トレーニングの方法は,標高1,400~2,400mの自然の高所を利用して16日間の高所滞在型の高所トレーニングを行った. 血液のpH調節に関わる赤血球膜タンパク(モノカルボン酸トランスポーター,赤血球陰イオン交換タンパク質など)の定量を試みたが上手くいかず,血液学的な効果の検証はできなかった.運動パフォーマンスの検証の結果,有酸素的解糖能力が改善されている可能性が示唆された.プレテストの結果を踏まえ,測定システムの再構築と高所・低酸素トレーニングのプロトコルの再検討を行う予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年度は,3種類の測定システムの構築とプレテストを行う予定であった.プレテストを実施することはできたが,3種類の測定システムのうち1つのシステムの構築が完了しなかった. 血液学的な検討項目の一つとして総ヘモグロビン量の測定が含まれ,運動パフォーマンスの検討項目の一つに低酸素に対する呼吸の化学感受性の測定が含まれている.これらの測定には,被検者の吸入気酸素分圧および吸入気二酸化炭素分圧をコントロールしながら再呼吸させるための閉鎖回路がそれぞれ必要となる.これら2つの測定システムの完成は平成24年9月末を予定していたが,計画通りの完成に至った.赤血球膜タンパクの分析には免疫学的手法を用いるが,安定的に検出できる分析システムの構築が遅れ,年度内の完成には至らなかった.現在も赤血球膜タンパクを定量する目処がたっていない.
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は,本実験であるトレーニング実験を実施する.当初の計画では人工低酸素環境を利用した疑似高所トレーニングを用いる予定であったが,自然の高所環境を利用した高所トレーニングに変更する.これはプレテストにおいて運動パフォーマンスに与える効果を検証した結果,予想以上に好成績を得たためである. 完成に至らなかった赤血球膜タンパクの分析システムの構築も引き続き行う予定である.本実験までにシステムの構築が間に合わず,赤血球膜タンパクの定量ができなかった場合を想定し,新たな測定項目を加える予定である.プレテストと同様に高所トレーニングの前後で運動負荷試験を実施し,その運動中の血中乳酸濃度を測定するが,この分析を2種類の手法で行うよう変更する.血漿中に含まれる乳酸塩を測る手法と,全血に含まれる乳酸塩を測る手法を用い,両手法によって得られた値の差を赤血球が取り込んだ乳酸塩とする.高地トレーニングによって赤血球膜に存在するモノカルボン酸トランスポーターのタンパク量に変化が生じた場合,赤血球が取り込む乳酸塩の量に変化が生じると考えた為である.その他の測定は当初の計画通り実施する予定である. また,トレーニング実験の遂行と併せて投稿論文の作成および研究発表を行う予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費は本実験における以下の消耗品の購入に使用する(120万程度を予定).(1)血液量・ヘモグロビン濃度の測定に関わる消耗品(一酸化炭素ボンベ,ソーダライム、マウスピースなど),(2)赤血球膜タンパクの分析に関わる測定キット・試薬類,(3)血中乳酸濃度測定に関わる消耗品(キャピラリー、希釈液,酵素膜など),(4)血ガス分析に関わる消耗品(一酸化炭素測定用カートリッジ,希釈液,キャリブレーションガス,キャピラリー,採血針など),(5)呼気ガス分析に関わる消耗品(サンプリングチューブ,キャリブレーションガス),(6)すべての測定に関わる共通の消耗品(マスク,消毒用エタノール、心電図電極、固定用テープ類、乾電池ほか). 本実験に携わる検者および被験者には,申請者の所属機関の規定する金額を支給する(20万程度を予定). 本実験は2回にわけて実施する予定であり,1回目を8月,2回目を10月に計画している.したがって,成果発表に関わる旅費,論文の作成や投稿にかかる諸経費(英文校閲料や投稿料など)を除く殆どの予算を11月までには執行する予定である.
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