研究課題/領域番号 |
24700671
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東京有明医療大学 |
研究代表者 |
笹木 正悟 東京有明医療大学, 保健医療学部, 助教 (30563473)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ビデオ分析 / スポーツ動作 / 運動解析 / サッカー |
研究概要 |
平成24年度は大学生男子サッカー選手を対象として,練習や試合の中で素早く方向変換するための技術や指導ポイントを探る試みを行った.関東大学サッカーリーグで撮影したビデオ映像から方向変換動作をModel-based image-matching 法で定量評価し,競技現場における優れたパフォーマンスと至らなかったパフォーマンスの特徴の差異を導出した.本研究では,特に日本サッカー協会で個人技術の課題として取り上げている対敵局面における守備の方向変換動作に着目して分析を行った. 男子選手の守備場面における方向変換では,接地時から重心最下降時まで身体重心高は3.3±1.4 cm (1.5~4.6 cm) 下降し,その後,離地時までに7.3±1.9 cm (5.3~9.7 cm) 上昇していた.特に,成功事例において,重心最下降時から離地時までの身体重心高の変位は小さい傾向がみられた.また,成功事例では,重心最下降時における体幹部,膝関節,股関節の屈曲角度は不成功事例に比べて小さい傾向を示した.このことから,相手に呼応して動くような守備場面では,過剰にかがみすぎない姿勢で構え,重心位置を一定に保つ技術が重要であると示唆された.特に,重心最下降時には過剰にかがみすぎず,あらゆる方向へ対応できる姿勢を維持することが重要であり,サッカー競技における守備場面のパフォーマンスを向上させるための実践的指導ポイントの1つになると考えられた. Model-based image-matching 法はこれまでスポーツ医学領域でのみ用いられてきたが,我々は初めてスポーツ科学領域における運動解析という観点から競技パフォーマンスの評価ツールとして本手法を活用できた.このことは今後,スポーツ現場で生じた動作を客観的に分析するツールとして様々なビデオ映像に応用することができると示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実施計画にて予定していたデータ収集および分析は,おおむね順調に進めることができている.研究成果は別に示す学術集会等にて発表しており,本研究を社会に発信することを積極的に進めている.また,自身がサポートを行っている大学サッカーチームに対しては指導実践の中で研究成果を活かすことができており,平成24年度大学サッカー選手権大会では好成績を収めることができた. また研究を推進していく中で,次年度に活かすべき課題や問題点が抽出されてきた.平成24年度に実施できた研究ではサンプルサイズが少なく,今後予定している計画以上に研究を推進していくためには,よりたくさんのビデオ映像を収集して分析・検討をしていく必要性が示唆された.
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は男子サッカー選手を対象として研究を進めてきたが,平成25年度以降は女子サッカー選手を対象としたデータ収集と分析を実施していく予定である.これまで用いてきた守備動作の方向変換動作について男性選手と女性選手の差異を検討し,特に女性アスリートのパフォーマンス向上に繋げるための指導指針を提案していきたいと考えている. また,女性選手は男性選手に比べて,スポーツ活動中における膝靱帯損傷が4~6倍多く発生すると言われている.これまでは受傷時のビデオ映像を用いてスポーツ傷害の原因やメカニズムの解明を行ってきたが,これからは受傷前のビデオ映像を用いて傷害発生のリスクを含んだ選手を評価・スクリーニングしていくことが必要である.そのため我々は,試合のビデオ映像から傷害発生のリスクを含んだ動作を抽出し,傷害予防に繋げるための方策や指導指針を提案していきたいと考えている.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度内に研究に必要な備品はほぼ整ったため,平成25年度以降はデータ収集と分析を行うために研究費を使用していく予定である.また,収集した映像データを保管・管理していくための消耗品(データ記録媒体)は,引き続き購入を予定している.さらに,本研究にて得られた知見は国内のみならず国際学会等でも積極的に発表・講演を行っていく予定であり,そのための費用として本研究費を使用していきたいと考えている.
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