研究課題/領域番号 |
24700675
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研究機関 | 聖泉大学 |
研究代表者 |
炭谷 将史 聖泉大学, 人間学部, 准教授 (20410962)
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キーワード | 総合型地域スポーツクラブ / ネットワーキング / 中間支援組織 |
研究概要 |
大学が核となって運営している地域密着型スポーツクラブ(以下,「クラブ」とする)が結んでいる関係性を明らかにするために,2つのクラブを対象としたインタビュー調査を行った.Aクラブは,大学の授業とクラブの活動を関連付け,クラブでの活動を授業としていた.このことにより,教員・学生・大学院生がクラブ運営に一体となって取り組んでいることが分かった.Aクラブには,子ども対象,成人対象合わせて8つの教室があり,教員と学生が連携して運営と指導を行っていた.また,県の広域スポーツセンター等との良好な関係を築くなと外部団体との関係を結び,充実したイベントなどを年に数回行っていることが明らかになった.Bクラブは,有志の学生と大学院生たちがクラブに関わっており,子どもの運動遊び教室を運営していた.Bクラブは,近隣小学校と協力体制を築き,小学校の体育館を活動場所として活用していた.いずれのクラブも,大学が運営をし,地域住民がサービスを提供してもらうという形での運営スタイルであり,地域課題を地域住民とともに解決するという関係性は築けていないことが課題として考えられた. 現在,総合型地域スポーツクラブが今後さらに発展し,スポーツ環境の充実に資する活動となるための関係チャネルとして,「中間支援組織」について研究を進めている.これまでのスポーツクラブ(総合型,地域密着型に限らない)は,強い連結に根付いた「タコツボ型」の組織であったと考えられる.しかし,地域密着型スポーツクラブが活発な活動をしていくためには弱連結のネットワークを活かすことが重要なのであることが考えられる.現在,この視点に基づいたフィールドワークを重ね,データ分析,論文執筆作業を進めているところである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの2年間の研究を通じて,活発に活動しているクラブは地元小学校や各種競技団体,他の総合型クラブと協力体制を築いていることが明らかになった.一方,会員数を減らしているクラブは,特定の人だけが活動を把握し,自前のリソースだけを活かしたサービス提供型になっていることが明らかになってきている(未発表).このことから,総合型クラブが活動を活発化させるために,幅広いネットワークの構築が求められることが明らかになったと言ってよい. また,チャンネルを結ぶ相手として,「小学校」が重要であることを明らかにした.あるクラブでは,小学校体育館に地域住民の為の入口を作るなど,相互の信頼関係が築かれているエピソードなども紹介した.このように,研究対象としている総合型クラブは地域課題の解決,コミュニティの再生などもそのミッションとしていることから,地域とクラブを結ぶ重要なチャネルが明らかになったことは意義深いと言えよう. また,フィールドワークの結果から構築しつつある仮説として,現在「繋がりの強さ」に着眼した研究を進めている.現在は,各地に構築されつつある中間支援組織や有志クラブによる互助サークルなどに着眼し,フィールドワークを行っている.研究支援の最終年度となる平成26年度は,この「関係性の強さ」にも着眼した研究を進めたいと考えている.
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今後の研究の推進方策 |
本研究が明らかにしようとする研究課題は,総合型クラブを活性化するためにクラブが関係性を結ぶ先(チャネル)である.そして,小学校が「地域への入口」が重要なチャネルであることを明らかにした.また,他のクラブとの関係を構築することが大事であり,その際,その関係があまりにも強固な者ではなく,「弱連結」(金井,1994)であることが望ましいのではないかという仮説を構築しているところである.つまり,総合型クラブが関係を結ぶべきチャネルは2種類に大別できると言える.すなわち,一方は直接的な利害関係を持つ,いわばビジネスパートナー,ステークホルダーとしての「強連結」を結ぶ“強連結チャネル”,他方は直接的な利害関係はなく,互助的な関係で経験や情報を共有しながら共存する「弱連結」を結ぶ“弱連結チャネル”である. 今後は,特に“弱連結チャネル”に着眼したいと考えている.この弱連結を結ぶネットワーク組織として,各県に存在する「総合型地域スポーツクラブ連絡協議会」や有志のクラブがつくっている互助サークルのような組織でのフィールドワークを現在行っている.今後は,フィールドワークに基づいて,その機能等を具体的な事例に基づいて明らかにし,エスノグラフィーとしてまとめる予定をしている.そして,学会での発表や論文にまとめ,仮説的知見を広く世に問い,今後の充実したスポーツ環境整備の一助としたい.
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