研究課題/領域番号 |
24700682
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研究機関 | 広島国際大学 |
研究代表者 |
崎田 嘉寛 広島国際大学, 工学部, 講師 (60390275)
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キーワード | 学校体育実践 / 戦時下 / 戦後 / 総力戦研究所 |
研究概要 |
本研究の目的は、1940年代の日本の公立小学校における学校体育がどのように展開したのかを実証的に明らかにすることである。 本年度は、戦後に先駆的な教育実践(学校体育)を立案していた公立小学校について、各種の教育・体育雑誌および先行研究から特定し、戦時下における資料の現存状況および分析方法の諸条件に基づいて、次の四校を抽出した。賀茂郡西條小学校(広島)、郡山市金透小学校(福島)、市原郡戸田村小学校(千葉)、足柄上郡福沢小学校(神奈川)。次に、これらの小学校を対象として、1940年代に作成あるいは発行された資料を、現地調査等によって収集した。最後に、収集した資料に基づいて、戦時下と戦後の教育実践(学校体育実践)を精査・比較検討した。この結果、各小学校で教育方法、教育内容(体操)、課外教育(体育的内容)などで戦前と戦後において連続する側面を一部ではあるが資料的に明らかにした。 一方で、1940年代前半における教育機能を有していた機関として「総力戦研究所」を取り上げ、そこで実施された「体育」について分析・考察し、「戦前・戦後の連続性と断続性」の把握に対する一助とした。この結果、次のことを把握した。(1)総力戦研究所で採用された身体活動(身体教育)のプログラム名称は、当時の公教育で採用された「体錬」ではなく、「体育」を使用していたこと。(2)戦時期の教育機関における体育プログラムにおいても、精神性が重視される武道や教練を排除した、合理的(科学的)な体育内容の実施が可能であったこと。(3)戦時期の身体活動プログラムにおいても、効果的で機能的な指導方法の構築と実施が可能であったこと。(4)第一期研究生の倉沢剛(当時:東京女高師)は、戦後の新教育における体育を「健康体育」と称し、「コア・カリキュラムの一分野として、一日のプログラムを引立てる特異な役割をはたすべき」と論じていること。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の課題は、戦時下から戦後の学校体育に関して、(1)断絶しなければならなかったものが連続した事象、(2)明らかに一貫する事象と断絶する事象、を実証的に解明することである。加えて、(1)および(2)を複眼的に考察することで、1940年代の公立小学校の学校体育を重層的に描き出すことである。 昨年度までに上記(1)の解明が計画通りに完了しており、本年度は上記(2)および(3)について必要な資料を当初計画通りにほぼ円滑に収集し、重要な部分について一部を除いて順調に分析・考察が行なわれている。このため、おおむね順調に研究が進展していると裁定した。
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今後の研究の推進方策 |
三年間を予定している本研究は、おおむね順調に進展しており、研究計画の変更あるいは研究を遂行する上での重要な課題の追加は生じていない。最終年となる平成26年度に関しても、当初計画通りに進める予定である。ただし、平成25年度の成果に対する自己再検証の手続きは行なう必要がある。 本年度は、(1)戦後の日本における学校体育実践に影響を与えた1940年代のアメリカ学校体育実践に関する資料の収集、(2)収集した資料に基づいて日本の学校体育実践との比較検討、(3)平成25年度の成果に対する自己再検証、(4)研究の総括、である。
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