研究課題/領域番号 |
24700684
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 日本文理大学 |
研究代表者 |
武村 泰範 日本文理大学, 工学部, 准教授 (10581580)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | スポーツ科学 / スポーツ心理学 / ニューラルネットワーク / 自己組織化マップ / データマイニング |
研究概要 |
スポーツの団体競技において個々のポジションや役割の適性がチームの状態に影響を与えている事は,明らかであり身体的な特徴や心理的な特徴といった見地から非常に多くの研究がなされている.しかし,双方を考慮した団体競技におけるチーム内での個人の役割や関係性を示す研究は,非常に稀であり,身体的特徴と心理的特徴に関する関連性は未だに明らかではない. 本研究では,身体的特徴量及び心理的特徴量の双方を考慮した団体スポーツにおける個々の役割適性を判断し,チームの関係性を示すクラスタリング器の開発を目標とする.そこで,本研究では申請者がロボティクス分野において,環境推定などに用いた自己組織化マップ(Self Organazing Maps)を用いて,双方の特徴量を用いたラスタリング器の開発を目指す. 団体スポーツにおけるチーム内の関係性や役割の適性を示すクラスタリング器を開発するには, 団体競技のチーム内の関係性や役割に関わる身体的特徴量及び心理的特徴量を明らかにする事が必要である.そこで, 当該年度は,統計学的見地に基づき,身体的特徴量及び心理的特徴量の解析を行った.身体的な特徴量は,先行研究(徳永ら)によって行われた手法を用いて,18項目の身体的特徴量を測定し,すべての項目における統計的な処理をポジション別に行った.また、心理的な特徴量は,DIPCA.3という心理テスト用紙を用いて計測を行い解析を行った.心理的な特徴量に関しては,PCA (主成分分析)を用いて特徴量の傾向を調べた.しかし,ポジションにおける適性や関係性を従来の解析方法では見出す事が出来なかった.同時に身体的な特徴量及び心理的な特徴量を提案する自己組織化マップを用いて,多次元のデータをクラスタリングする手法を提案し,解析を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
データの統計処理に関しては,本学におけるラグビー部員に協力してもらい,データを身体的特徴量に関して18項目,心理的な特徴量として,DIPCA.3を用いて12項目の評価指標を得る事が出来た.また、従来の統計学的な見地にもとづき、各項目に対して,ポジション的な適性があるかどうかを検証した. 身体的な特徴量では,身長や体重等の項目において,ポジションによって有意な差がある事が示された.しかし,18項目すべての項目で特徴的な傾向が示された訳ではなかった.また、複数の項目を組み合わせたデータの適性に関しては,従来の統計学的な見地では,解析する事が困難であるため、自己組織化マップを利用した新しいアルゴリズムにおいて解析を行った.その結果,フォワード(FW)とバックス(BK)において,身体的な特徴量を入力して作成された特徴マップでグループ分けをする事が可能であった.また、いくつかのメンバーがグループ分けに該当しない事もあったが,これは別のポジション適性の可能性があるのではないかという新しい知見を得る事にも成功した. 心理的な特徴量をDIPCA.3を用いて計測された.DIPCA.3の結果からレギュラーメンバーは,心理的な特徴量も優れている事がわかった.つまり、現状のコーチは,身体的な特徴だけでなく,心理的な特徴を上手くとらえ,レギュラーメンバーを選抜している事がわかった.また、主成分分析(PCA)を用いてどのような現在のチームの心理的な特徴をとらえる事に成功した.しかし、ポジション別での傾向を見出す事は出来なかった.今後は,自己組織化マップのアルゴリズムを用いる事で解析を行う予定である.
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度に得られた結果をもとにして,引き続き特徴量をもとに自己組織化マップ(Self Organizing Maps:SOM)を用いて,多次元特徴量をクラスタリングするソフトウェアの開発を行う.平成25年度の目標は,アルゴリズムから作成される2次元の特徴マップをもとに, 団体における個々の関係性(類似性)やポジションの適性を判断する事である. つまり, 現在役割として就いているポジションと特徴マップからの近傍にいる人物との類似性を比較する事で, 現在のポジションが的確であるのかを判断する. また,この特徴マップから各選手の新しい役割の可能性を近傍の類似する選手の役割から見出す事ができると予想される.つまり,特徴マップから,現在のポジションの適性を判断し,個人の新たな可能性やトレーニングの方針を決定する事が可能であると考えられる. 次に,この実験を定期的に行い,特徴マップの更新を行う.また,この特徴マップにもとづいた指導によるトレーニングの結果がどのように反映しているかを新しく作成した特徴マップの変化で比較検討する.この結果にもとづいて,アルゴリズムの改良及び特徴量の更新を行う.同時に,コーチングの場面における個々の適性評価の補助を行う事ができるかを検討し,チーム内の関係性を示す特徴マップから次世代の選手獲得の方針等を件とする事を目標に解析を行う. また,比較検討を行う為に身体的特徴量単体で作成された特徴マップや心理的特徴量単体で作成された特徴マップとの比較検討を行う.この結果より,双方を考慮した特徴マップにどのような変化が生じるかを検討する.
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は,データ収集に必要な検査用紙などの消耗品の購入に物品費は用いる.また、実験のデータ解析に必要なソフトウェアや解析用PCなどの購入も計画している. 旅費は,昨年度に得た成果を国内学会や国際学会において発表を行い,成果に対する外部的な評価を得て,研究の方向性を模索する.当該年度は,国内学会として,スポーツ心理学会に参加し,心理的な特徴量に対する解析結果の報告や議論を行い.国際学会として,IEEE SMC Cybernetics部門におけるSoft Computing部門において,本研究の成果発表を行い,アルゴリズムの正当性や可能性について探る. 人件費に関しては,本年度は,定期的なデータの収集と解析を目標としているため実験に対して,数名の補助を雇い,データの収集を定期的に行う.
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