研究課題/領域番号 |
24700685
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研究機関 | 日本体育大学女子短期大学部 |
研究代表者 |
須永 美歌子 日本体育大学女子短期大学部, その他部局等, 准教授 (70534064)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 性周期 / 女性スポーツ |
研究概要 |
本研究の目的は、月経周期(血中女性ホルモン濃度の増減)が運動時の生体内代謝物質の変動に及ぼす影響についてメタボロミクスを用いて分析し、特に変動の差異が大きいターゲット物質を探索することであった。24年度は、「月経周期がレジスタンス運動時の生体内代謝物質に与える影響」について検討を行った。被験者は、正常な月経周期を有し、婦人科疾患がなく経口避妊薬を服用していない成人女性6名であった。測定項目は、最大拳上重量、生体内代謝物質、等尺性最大筋力、女性ホルモン(エストラジオール、プロゲステロン)濃度、ヘモグロビン濃度、ヘマトクリットであった。レジスタンス運動として膝伸展運動(レッグエクステンション)を最大挙上重量の70%強度でセットごとにオールアウトまで3セット実施した。測定は、卵胞期および黄体期にそれぞれ実施した。血液をレジスタンス運動前後に正中静脈より採取し、速やかに血漿に分離して、-80℃で凍結保存し、後日分析を行った。その結果、安静時において卵胞期に比べて黄体期に糖原性アミノ酸(ロイシン、グルタミン、リジンなど)が有意に低下することが確認された。血中アミノ酸濃度の変化は、筋タンパク合成に強く関与することが報告されており、月経周期のフェーズによって、運動刺激に対する筋タンパク合成に差が生じる可能性も考えられる。以上のことから、レジスタンストレーニングのプログラム作成において、女性は月経周期を考慮することで効率的な筋機能の向上が期待できる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、各被験者の月経周期に合わせて測定を行わなければならない。そのため、正常な月経周期を有する女性を対象としているが、正常範囲(±7日)で月経開始日が変動することもある。それに伴い、測定日を変更する必要があり、当初の予定よりもデータ収集に時間を要している。
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今後の研究の推進方策 |
月経周期が有酸素運動時の生体内代謝物質に与える影響について検討していく。 被験者は、正常な月経周期を有し、婦人科疾患がなく経口避妊薬を服用していない成人女性を対象とする。事前に最大酸素摂取量を測定し、運動負荷を設定する。有酸素運動として自転車エルゴメーターを用いてペダリング運動を行う。強度はVO2maxの70%、運動時間は60分とし、卵胞期および黄体期にそれぞれ実施する。採血は、有酸素運動前後に行い、速やかに血漿および血清に分離し、生体内代謝物質および生化学的指標について分析する。 本研究によって、月経周期(血中女性ホルモン濃度の増減)に応じて運動時に大きく変動する新たな代謝物質が特定できれば、その代謝応答に応じてトレーニングプログラムを選択することが可能になる。たとえば、脂質代謝異化経路の代謝物質が大きく増加するフェーズに脂肪燃焼を目的とした有酸素運動を行い、アミノ酸代謝において同化作用を示す代謝物質の増加または異化作用を示す代謝物質の減少がみられるフェーズにレジスタンス運動を実施することで効率的にトレーニング効果を獲得することが期待できる。したがって、トレーニング条件を従来の男女同条件ではなく、女性特有のトレーニング条件の設定、すなわち「月経周期を考慮したトレーニングプログラム」を考案し、女性にとって効率的なトレーニング効果の獲得が期待できる。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度では、月経周期が有酸素運動時の生体内代謝物質に与える影響について検討していく。被検者数を当初の予定(3名)よりも3名増加させ、6名とする。今後もデータ収集を継続していくため、試料の分析費用ならびに消耗品の購入および研究成果発表などに研究費を使用する予定である。
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