本研究では、持久性運動時の血中代謝物質をメタボローム解析を用いて網羅的に解析し、月経周期による生体内変化を包括的に検討することを目的とした。被験者は、正常な月経周期を有する女性6名であった。卵胞期と黄体期にそれぞれ自転車エルゴメーターを用いた持久性運動(最大酸素摂取量の70%強度、60分間)を行った。運動前および運動直後に採血を行い、性ホルモン濃度および血中代謝物質を分析した。血中代謝物質は、キャピラリー電気泳動-飛行時間型質量分析計を用いてメタボローム解析を行った。実験前日の夕食は規定食とし、実験開始12時間前から摂食を禁止した。血清エストラジオール濃度およびプロゲステロン濃度は、卵胞期に比べて黄体期に有意に高い値を示した。メタボローム解析によって149物質が検出された。そのうち、安静時においてアラニン、オルニチン、シトルリンが卵胞期に比べて黄体期に有意に低い値を示した。また、持久性運動による血中代謝物質の変動(運動後の定量値/運動前の定量値)にフェーズ間で有意な差が認められた物質は、アスパラギン酸、クエン酸、クレアチニン、ベタインであった。本研究において、卵胞期に比べて黄体期にアラニン、オルニチンなどの糖原性アミノ酸濃度が低下することや運動刺激による血中代謝物質変動がフェーズ間で異なることが示された。以上のことから、月経周期のフェーズによってエネルギー基質利用が変化し、特に糖新生経路の活性に影響する可能性が示唆された。
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