研究概要 |
アスリートへの心理サポートの実践が増える一方で,彼らが継続的な心理サポートを受ける過程で,どのような心理的変容をきたすのか,そして彼らのパフォーマンスの向上に心理サポートがどのように貢献するのかについて,そのメカニズムに迫る研究は少なく,特にトップレベルのアスリートに関する報告は極めて少ない.そこで本研究では,トップアスリートの心理サポート体験過程の資料を用いて,彼らの体験する身体をキーファクターとし,心理的変容が競技力向上に寄与するメカニズムを明らかにすることを目的とした. 本年度の具体的な取り組みは,次の通りである.1)資料収集:分析対象としてロンドン五輪出場を目指すアスリートで個別心理サポートを実施している者を選定した.具体的には心理サポート実践の資料(選手の語りの逐語記録,適宜実施される心理検査結果(風景構成法作品))が分析対象となった.約60名の風景構成法作品は延べ約120作品であった.2)資料整理:先述の資料について,身体をキーワードにした心理特性を読み取るための指標を整理した.標準化された指標がないため,先行研究を参考に約100項目の指標を作成し,それに照らし合わせて本資料を整理した.記述統計から得られた結果を概観し,アスリート特有の表現からアスリート心性を見出すことが可能であることを示唆した(関連学会にて発表).これらの資料から身体体験に特徴のある個別事例を数ケース抽出し,次年度において事例検討を実施するケースを抽出した,次年度は,アスリートの成熟とパフォーマンス変容に対する身体体験の意味を探る予定である. トップアスリートへの支援実践から得られる資料は貴重であり,彼らの心理的変容と競技力向上との関係に迫る研究の積み重ねは,競技に専心するアスリートに望ましい環境作りへの知見を提供できる.
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