研究課題/領域番号 |
24700693
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研究機関 | 清和大学 |
研究代表者 |
東浦 拓郎 清和大学, 法学部, 講師 (50436268)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | スポーツ競技者 / 視空間知覚‐認知処理 / 反応時間 / 事象関連電位 / Go/NoGo P3 |
研究概要 |
スポーツ競技者は長年にわたる運動トレーニングの結果,骨格筋や呼吸循環器が構造的,機能的に非競技者と大きく異なることは周知の事実である.さらに近年では,運動トレーニングは脳神経系に可塑的変化をもたらすことが報告され,スポーツ競技者の脳機能に関しても注目されている.しかし,スポーツ競技者の脳機能に関する研究は端緒についたばかりである.そこで本研究課題では,特にオープンスキル種目においてパフォーマンスを左右する一要因となる視空間知覚-認知処理機構に注目し,スポーツ競技者特有の視空間知覚-認知処理機構の解明を目的とした. 平成24年度は,非競技者,バレーボール競技者,陸上跳躍競技者を対象に視空間認知課題を行い,課題遂行時の行動指標(反応時間,正反応率)と事象関連電位のGo P3およびNoGo P3成分を比較した.その結果,両スポーツ競技者の反応時間は非競技者よりも有意に短く,Go P3およびNoGo P3も高振幅を示した.また,バレーボール競技者のNoGo P3振幅は陸上跳躍競技者に比べ有意に大きかった.以上の結果から,①スポーツ競技者は非競技者に比べ,視空間認知課題のパフォーマンスに優れており,視空間認知処理に関わる神経活動も異なること,②高いオープンスキルが要求されるバレーボール競技者と,その要求度の低い陸上跳躍競技者では,反応抑制に関わる神経活動で差異が認められることが明らかとなった。 本年度の研究成果は,長期間の身体運動はヒトの脳機能にポジティブな効果をもたらすことを裏付けるとともに,スポーツ競技者間においても,その競技種目の特性によって視空間認知処理機構への影響が異なることを示唆する重要なものである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
スポーツ競技者特有の視空間知覚-認知処理機構の解明を目的として,平成24年度は,非競技者,バレーボール競技者,陸上跳躍競技者を対象に視空間認知課題を行い,課題遂行時の行動指標(反応時間,正反応率)と事象関連電位のGo P3およびNoGo P3成分を比較した.その結果,おおむね当初の仮説を支持する結果が得られた(①スポーツ競技者は非競技者に比べ,視空間認知課題のパフォーマンスに優れており,視空間認知処理に関わる神経活動が異なっていた,②高いオープンスキルが要求されるバレーボール競技者と,その要求度の低い陸上跳躍競技者では,反応抑制に関わる神経活動で差異が認められた)ことから,現在のところおおむね順調に研究が進展していると評価する.
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度の研究成果の中で注目すべきところは,バレーボール競技者と陸上跳躍競技者でNoGo P3(反応抑制に関わる神経活動)に差異が認められた点である。したがって,平成25年度はこの点を突き詰めるため,対象のスポーツ種目を拡大するとともに,NoGo P3を誘発するのにより適した認知課題を用いて詳細に検討する予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度も研究が滞りなく遂行できるよう,実験器具および消耗品の購入のため物品費30万円,実験補助員に対する実験補助費と国際誌への投稿論文の添削・校閲のため謝金等を60万円計上する予定である.また,研究資料収集及び研究成果の学会発表を行うため,旅費30万円も計上する予定である.その他として,平成25年度は本研究課題の完結年度であるため,社会,国民への成果報告のためのパンフレット作成費8万円を計上する予定である.
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