本研究の目的は超音波エラストグラフィを用いて筋硬度を定量する方法を確立し、その方法を運動による筋コンディション変化の評価に応用することであった。今年度はまず基礎的検討として、筋硬度と関節柔軟性の関係を検討した。52名の一般成人男女を対象に、腓腹筋内側頭の弾性(筋硬度)を超音波エラストグラフィによって測定し、足関節柔軟性の指標として受動的関節スティフネスを関節角度と受動トルクの関係から求めた。底屈30°、底背屈0°および背屈20°において筋硬度と関節スティフネスの関係を検討したが、すべての関節角度において両者の間に有意な相関がみられなかった。このことから、関節柔軟性の個人差は筋硬度の個人差に起因するものでないことが示された。次に応用的検討として、繰り返しの筋力発揮による筋硬度の変化を検討した。一般成人男性1名に10回6セットの等速性膝伸展運動を最大努力で行なわせ、運動前後の大腿直筋の筋硬度および筋厚、等尺性膝伸展トルクを測定した。その結果、運動後に大腿直筋の筋硬度および筋厚は増加し、膝伸展トルクは減少した。繰り返しの運動によって関節トルクは減少し、パンプアップによって筋厚および筋硬度は増加したと考えられた。さらに、筋損傷による筋硬度の変化を検討するため、一般成人男性1名に20回10セットのカーフレイズを行なわせ、運動前後の腓腹筋内側頭の筋硬度および血漿クレアチンキナーゼ活性値を測定した。その結果、クレアチンキナーゼ活性値および底背屈0°で測定した筋硬度は運動3日後に増加したが、底屈30°で測定した筋硬度はそのような変化を示さなかった。このような応用的検討から、超音波エラストグラフィを用いて測定した筋硬度によって筋コンディション変化の評価できる可能性が示唆された。
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