研究課題/領域番号 |
24700697
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
宮川 健 信州大学, 医学系研究科, 研究員 (90596066)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 登山 / 高所 / 低所 / 脱水 |
研究概要 |
【研究目的】中高齢者の登山ブームに伴って増加している登山事故を防止するため、登山中の脱水により引き起こされる熱中症に着目をした。 【被験者】健康的な中高齢者20名(男性20名、平均年齢 68±3歳) 【プロトコール】①体力測定(2012年9月21日)②高所登山(2012年9月27日、乗鞍剣ヶ峰2350m~3025m);③低所登山(2013年11月14日、高ボッチ高原900m~1580m、悪天候のため山頂1630m断念)。 【測定項目】①体力測定;身体形態(身長、体重、体脂肪)、体組成計測、最高酸素摂取量、等尺性膝伸展/屈曲筋力 ②高所登山;登山前体重、登山中運動量、登山中心拍数、登山中尿量、登山後体重、登山後飲水量、終了時自覚的疲労度(VAS) ③低所登山;②と同様。 【測定結果】②高所登山;快晴、平均気温18度、平均湿度30%、行動時間289±5分、休憩時間65±4分、総運動量801±26kcal、発汗量2337±147g、飲水量1074±94g、尿量225±33g、終了時疲労度4.1±0.4㎝であった(平均値±SE)。③低所登山;曇り時々雪、平均気温4度、平均湿度70%、行動時間225±2分、休憩時間30±3分、総運動量696±13kcal、発汗量1702±155g、飲水量465±59g、尿量333±60g、終了時疲労度3.1±0.4㎝であった(平均値±SE)。 【考察】低所登山当日が悪天候(雪)であり安全を確保するため、昼食をとった避難小屋(1580m)から山頂(1630m)までの往復45分の行程を断念した。そのため、低所登山では行動時間、総運動量、終了時疲労度が高所登山より小さくなった。また、低所登山では気温が低かったことから、高所登山と比較して発汗量に対する飲水量の割合が低く、一方で尿量は多くなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究日程は滞りなく行ったが、高所登山と低所登山の外気温を合わせることができなかったため、高所と低所における脱水の比較検討は難しかった。しかし一方で、これまで測定できなかった寒冷時の登山データを計測することができたため、新たな研究課題として『寒冷時と温暖時の登山における脱水』を加えて研究を行うこととした。 そこで、25年度には、低所登山では温暖時に、高所登山では寒冷時に登山を行う必要がある。そのうえで、i)温暖時および寒冷時それぞれについて低所と高所を比較する。加えて、ii)低所および高所それぞれについて温暖時と寒冷時を比較する。つまり、25年度は24年度と同様に①体力測定、②高所登山(寒冷時)③低所登山(温暖時)を行うため、24年度の達成度は研究の50%である。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定では、『高所登山と低所登山における脱水により引き起こされる熱中症の危険性』を検討することであったが、24年度の研究にて、これまで測定できなかった寒冷時の登山データを計測することができたため、25年度には新たな研究課題として『寒冷時と温暖時の登山における脱水により引き起こされる熱中症の危険性』を加えて研究を行うこととした。 寒冷時では、手足など体の末端の血管が縮み、中心静脈圧が増すため、脱水を感知しにくい、加えて、寒さが刺激となって、尿を出そうとする交感神経のはたらきが強くなるため、尿量が増加する。つまり、発汗量が等しければ寒冷時の方が脱水の危険性が高い。これらのことを、実際の臨床にて同じ山の登山を行い報告した例がないため、寒冷時登山の安全確保のため研究意義が高い。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初計画で見込んだよりも安価に研究が完了したため、次年度使用額が生じた。 25年度は24年度と同様に①体力測定、②高所登山(寒冷時)③低所登山(温暖時)を行うため、研究実施のための必要予算はほぼ同額となるが、研究成果を発表したり、論文化するために国内外の学会参加への参加費および交通費等が増額となる。
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