研究課題
本研究の目的は小胞体の内部環境の変化(小胞体ストレス)に適応するための応答シグナルのうちPERK-eIF2αリン酸化シグナルの骨格筋における役割を明らかにすることである。昨年度までに作製したPERKシグナル活性化トランスジェニックマウス(TGマウス)において食事性肥満に抵抗性を持っていることが観察されたことから本年度はその分子メカニズムの解明を試みた。まず、野生型マウスとTGマウスの骨格筋においてマイクロアレイ解析を行い発現変化している遺伝子の同定を試みた。過去の培養細胞での報告と一致してTGマウスにおいてアミノ酸代謝、特にシステイン代謝経路を触媒する酵素の遺伝子発現が上昇していた。また、肥満軽減作用をもつ内分泌ホルモンFgf21の発現がTGマウスで上昇していた。Fgf21は、褐色脂肪細胞での熱産生関連遺伝子の発現を上昇させることが知られており、昨年度に得られた結果と一致しているためさらにPERK経路によるFgf21遺伝子発現制御のメカニズムを解析した。その結果、PERK経路の下流転写因子として知られているAtf4がFgf21のプロモーター領域に結合し発現制御していることをルシフェラーゼアッセイ法とクロマチン免疫沈降法から明らかにした。さらにFgf21は小胞体ストレスの誘導によって発現上昇し、Atf4を欠損したマウス胎児繊維芽細胞においては発現上昇がほとんど見られなくなることから小胞体ストレスによるPERK-eIF2αリン酸化-ATF4という経路がFgf21発現制御に重要であることがわかった。以上のことから、骨格筋におけるPERK-eIF2αリン酸化シグナルは骨格筋においてはアミノ酸代謝を変化させ、一方で内分泌ホルモンFgf21発現を誘導し褐色脂肪細胞でのエネルギー消費を亢進させて肥満を防ぐことが明らかとなった。
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Cells, tissues, organs.
巻: 198 ページ: 66-74
10.1159/000351462
http://www.genome.tokushima-u.ac.jp/dmb/DMB/homu.html