研究課題/領域番号 |
24700699
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研究機関 | 鹿屋体育大学 |
研究代表者 |
與谷 謙吾 鹿屋体育大学, スポーツ生命科学系, 講師 (10581142)
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キーワード | 筋電図 / 反応時間 / 経頭蓋磁気刺激 |
研究概要 |
外部刺激から筋電図が反応するまでの時間(筋電図反応時間)は神経系の処理時間を反映し、反応課題全体の処理時間の中でも多くを占める。そのため、従来の反応時間研究では、日常生活における適応的な行為やスポーツに関する卓越した反応パフォーマンスを促進させる上で、筋電図反応時間を短縮させる試みが多く行われてきた。その一方で、筋電図反応時間の遅延に関する知見は希少であり、今後、その予防策を考慮する上でもスポーツ科学が担う課題として発展が望まれる分野であると考えられる。そこで本研究は、筋電図反応時間の遅延に関するメカニズムを非侵襲的手法を用いて明らかにすることを目的とした。 本年度は、昨年度に引き続き、経頭蓋磁気刺激装置を用いて筋電図反応時間を1.脳内の処理時間(VMRT)と2.下行性の伝導時間(MEP潜時)に区分して評価しつつ、新たに反応課題中の脱酸素化ヘモグロビン(HHb)の相対濃度を前頭部から計測し、反応の遅延に関する神経系への影響を検討した。健康な成人男性を対象に、光刺激に対する筋電図反応時間を一側肢の反応課題より計測し、その際、対側肢では事前の力発揮(最大随意収縮[MVC]に対する20%、40%、60%)を遂行させた。その結果、筋電図反応時間は力発揮の増加に伴って長くなる傾向を示し、一側肢のみ(力発揮なし)の場合と比較して60%MVCでの時間は有意に長くなった。VMRTも同様に、60%MVC時は有意に長く、また、HHbにおいても増加する傾向を示した。一方、MEP潜時は、力発揮の有無に関わらず不変であった。以上の結果より、筋電図反応時間における変化(遅延)は、MEP潜時ではなくVMRTに起因し、さらに、これまでの知見・結果を考慮して、その遅延が視覚野以降から運動野に至るまでの前頭領域による高次処理に影響している可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、反応の遅延に関する中枢メカニズムを解明することである。現在まで、非侵襲的な新たな測定手法を取り入れつつ、遅延の現象に対して脳内の処理時間が影響を受けていることを明らかにしてきた。次年度は、その脳に対して反応課題中に磁気刺激を与えて神経系の処理を外乱し、反応時間にどのような影響をもたらすのかを検討したいと考えている。以上の点から、当初の計画目標に沿った現在までの達成度を「概ね順調に進展している」と自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り、次年度は経頭蓋磁気刺激装置(Single-pulse磁気刺激法)を用いて、脳内の処理中に刺激を与え、それによる処理の外乱が反応時間に与える影響(変化)を検討する予定である。刺激の領域は先行研究によって決定するが、各個人の反応時間(脳内の処理時間)の違いにより刺激のタイミングなどの変更が生じる可能性が考えられる。そのため、意図的に刺激領域下の可塑性(抑制など)を生じさせることが可能なPared-pulse磁気刺激法の併用も考慮しつつ、検討したいと考えている。
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