研究課題
身体が外部刺激に対して素早く反応する際、神経系の所要時間(筋電図反応時間: PMT)は、反応処理過程全体の半数以上の割合を占める。そのため、従来の反応時間研究では、その時間を短縮させる試みが多く行われてきたが、遅延に関する知見は希少であり、今後、発展が望まれる分野であると考えられる。本研究では、PMTの遅延に関する中枢メカニズムを非侵襲的手法を用いて調査することとした。本年度は、反応課題中に経頭蓋磁気刺激装置を用いて頭頂から刺激(外乱)を与えた際のPMTへの影響を検討した。健康な成人男性を対象に、光刺激に対するPMTを計測し、課題中の磁気刺激パターンとして単発法、並びに二連発法を施した。各法の刺激強度において、単発法は、安静時に約1mVの運動誘発電位(MEP)が記録できる強度を、二連発法では、単発法と同様の強度(100%: 試験刺激)と、それに先行した80%強度(条件刺激)を用いた。また、二連発法の刺激間隔(ISI)は、3ms(3-ISI)と10ms(10-ISI)で行った。加えて、単発法および二連発法の試験刺激のタイミングは、光信号から100ms時に与えられるように設定した。尚、実験前に、全ての被検者は、脳内の処理時間(VMRT)を計測し、VMRTが100msよりも短い者がいなかったことを確認した。全ての刺激条件(単発法と二連発法)は、安静時(刺激無し)と比較して、PMTが有意に長くなった。一方、二連発法3-ISIのPMTは、単発法や二連発法10-ISIと比較して有意に短くなり、同様に、刺激時に誘発されるMEPの振幅も3-ISIは単発法や10-ISIよりも有意に小さかった。加えて、各個人のVMRTと各刺激条件のPMTとの間には正相関がみられた。以上より、外乱がもたらす反応処理の遅延は、皮質興奮性の影響、並びに各個人の脳内の処理時間に関連することが推察された。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (9件)
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