研究課題/領域番号 |
24700701
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 県立広島大学 |
研究代表者 |
山岡 雅子(遠藤雅子) 県立広島大学, 人間文化学部, 助教 (30336911)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 食事性低血圧 / 運動後低血圧 / 循環応答 |
研究概要 |
運動や食事は,それぞれ単独で,その後,数時間にわたって血圧を低下させる可能性がある.血圧低下の主な原因として,末梢組織での血管抵抗の減少が考えられるが,運動と食事ではこの血管抵抗が減少する組織(局所)が異なっている.しかし,両者を組み合わせた運動後の食事摂取について循環調節の面から検討した研究はない.申請時の「研究全体の目的」は,運動後低血圧時の食事摂取が局所の血行動態をどのように変化させ,最終的な血圧を調節するのかについて検討することである. 初年度の平成24年度は,申請時の研究実施計画の通り,研究目的の第一段階として,食後の循環調節について先行研究で明らかにされていない部分である食事摂取後の各臓器・組織の血行動態について検討した.その点を確かめて,運動後の食事摂取時の全身および局所の血行動態について検討した.被験者は食事の代用として75gグルコース溶液を摂取した.グルコース溶液摂取後,上腸管膜動脈の血管は拡張したが,上腕動脈の血管は収縮し,結果として平均血圧に有意な変化は認められなかった.運動後低血圧時には,上腕と膝下動脈の血管は有意に拡張したが,上腸管膜動脈の血管は変化しなかった.運動後低血圧時にグルコース溶液を摂取すると,平均血圧は運動後低血圧時となんら差異のない変化を示した.これは,運動終了後にグルコース溶液を摂取すると上腸間膜動脈の血管は拡張したが,運動後に拡張していた上腕と膝下動脈で血管収縮が引き起こされたことに起因していた.つまり,運動後低血圧中に食事を摂取すると,身体は各組織への血管応答をすばやく変化させ,さらなる血圧低下を防ぐような調節をすることが示唆された.このことから,一般の健常者に認められる運動後の血圧低下の程度は,食事摂取によって影響を受けないことが考えられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題「運動後低血圧時の食事摂取が全身および局所の血行動態に及ぼす影響」で申請時に予定していた本年度の研究目的は,先行研究で明らかにされていない食事摂取後の各臓器・組織・部位の血行動態について検討し(実験1),この点を確立した上で次の実験として,運動後低血圧時のグルコースおよびフルクトース含有飲料摂取が全身および局所の血行動態に及ぼす影響について検討する(実験2)ことであった.研究実績にも記載したように,実験1については,食事摂取後の局所の血行動態として,主に小腸へ血液を供給する血管である上腸間膜動脈,非運動肢である上腕動脈,運動肢である膝下動脈の血管応答を検討できたことから,当初の計画どおりに研究は進展している.実験2については,運動後低血圧時のグルコース含有摂取後の循環応答については検討することができたが,フルクトース含有飲料摂取については,実験を遂行するための時間が足りず検討することができなかった.その原因としては,1回の実験のプロトコールが約3時間半と長時間であったこと,実験条件として早朝空腹時という制限があるため,午前中しか実験を行えなかったということ,また,測定対象血管の一つである上腸間膜動脈の血流量を超音波法によって測定する際に腹腔内のガス等の問題で血管の鮮明な描画を得ることが不可能であったため,正確なデータを得るために取り直しが必要であったことなどがあげられる.さらに測定項目として,当初の計画では循環パラメータに加えて血液パラメータも測定する予定であったが,申請備品であるマイクロプレートリーダの納品が実験開始時に間に合わず,H24年度の測定は断念した.総合的に判断すると,申請時の計画どおりに実験の遂行が不可能であった部分は一部あるが,研究はおおむね順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
H24年度は食事摂取後の全身および局所の血行動態(実験1)と運動後低血圧時のグルコース摂取が全身および局所の血行動態に及ぼす影響(実験2)について検討したが,現在までの達成度にも記載したように,申請時に計画していた運動後低血圧時のフルクトース摂取が全身および局所の血行動態に及ぼす影響については,スケジュールの都合上等の理由から,研究を遂行することが不可能であったため,被験者代等の関係で次年度以降に149,308円分の繰越金が生じた.次年度以降は同じ単糖類でもグルコースとは種類の異なるフルクトースに着目して検討することを予定している.最近の研究ではフルクトース含有飲料の摂取が急性的に血圧の上昇を引き起こすことが報告されており,慢性的なフルクトース摂取が高血圧を発症するリスクがあるという研究も報告されている.しかし,この血圧上昇の詳細な機序は未だ明らかにされていない.そこで次年度以降の研究では,申請時の研究計画を変更して,フルクトース摂取後の血圧上昇は,心拍出量(CO)と総末梢血管コンダクタンス(TVC)のどのような変化によって引き起こされるのか,そのメカニズムを明らかにすることを第1の目的として実験を行う予定である.その結果を確立した上で,H24年度に実験を遂行することが不可能であった運動後低血圧時のフルクトース摂取が全身および局所の血行動態に及ぼす影響について検討することを予定している.また,フルクトース摂取と生活習慣病発症の関連性が先行研究で報告されていることから, H24 年度には測定が不可能であった血中トリグリセリド,血糖値およびインスリンといった血液パラメータについても循環パラメータに加えて測定し,検討する予定である. 上述した研究計画を遂行するために,消耗品,被験者への謝金,実験補助者への謝金,研究成果発表のための学会参加への旅費等に研究費の使用を計画している.
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし 産前産後の休暇又は育児休業による中断 中断期間:平成25年2月25日~平成26年5月31日
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