研究課題
H24およびH26年度の結果から,運動後低血圧時にグルコース溶液を摂取すると,血圧低下は維持されたが,フルクトース溶液を摂取すると,運動後に低下していた血圧が上昇した。また,小腸への血流量は,フルクトース溶液と比べて,グルコース溶液で2倍程度増加した。つまり,グルコース溶液摂取では,小腸の血管コンダクタンス(VC)が上昇することで,血圧の低下が生じるのに対して,フルクトース溶液摂取では,小腸のVCが安静時とほとんど変化せず,血圧の低下が認められなかった。この両糖質溶液での小腸における血流応答の差異は,溶液が胃から十二指腸へ送り出される速度の違いによると推察した。そこでH27年度は,まず最初に溶液の胃から十二指腸への排出(胃内容排出)を超音波法によって非侵襲的に測定する技術の確立を目的として実験を行い,その後,その測定技術を用いて,安静時と運動時におけるグルコースとフルクトース溶液摂取時の胃内容排出について比較検討した。超音波断層法にて,胃幽門部横断面積をグルコース溶液(8%,350 ml)摂取前と摂取直後,その後10分間隔で60分間測定した。摂取直後の胃横断面積に対する相対的変化から胃内残留率を求め,胃内容排出を評価した。結果,グルコース溶液は胃から十二指腸へ1.6 kcal/minの割合で排出された。この値は,先行研究で報告されている値と同程度であり,本研究で用いた方法の妥当性を確認した。また,安静時では,フルクトース溶液がグルコース溶液より胃内容排出は有意に促進したが,運動時では,両溶液間の違いが消失した。安静時において,フルクトース溶液がグルコース溶液よりも胃内容排出は速いにも関わらず,小腸の血流量増加は,グルコース溶液で著しいことから,両糖質溶液間の小腸血流応答の違いに胃内容排出は関与していない可能性が示された。
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