研究課題/領域番号 |
24700709
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
佐保 泰明 帝京大学, 医療技術学部, 助教 (90438036)
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キーワード | 前十字靱帯損傷 / 反応課題 |
研究概要 |
前年度の研究成果をもとに、膝前十字靱帯(ACL)損傷の予防を目的とした介入プログラムを作成した。プログラムの内容としてコアトレーニング、下肢筋力トレーニング、プライオメトリクス、反応課題を用いた動作トレーニングを中心として、ウォーミングアップとしても利用できるよう15分程度で実施できる内容とした。 介入プログラムを男子大学サッカー選手に対して実施し、その前後において反応課題を用いたステップ動作の三次元動作解析を行った。課題動作は5mの助走後、右脚で①90度サイドステップ、②45度サイドステップ、③45度クロスオーバーステップとした。ステップの方向は、対象者がステップ地点に到達する直前に提示するものとし、対象者が瞬時に判断して課題を遂行するものとした(反応課題)。前十字靱帯損傷のリスクとして過度な膝関節外転が挙げられ、反応課題により膝外転角度が大きくなることが確認されている。今回作成したプログラムの実施では、反応課題による膝外転角度の変化を検証したが、介入プログラム前後で有意な変化は確認できなかった。そのため、プログラムおよび解析不尾法に解析の余地が残った。 今後の研究の展開として、プログラム内容を再考し、段階的に負荷レベルを変更する形として再検証すること、また、反応課題におけるカッティング動作において前十字靱帯損傷の危険姿勢を取りやすい対象者をあらかじめ抽出し、重点的に実施すること、前十字靱帯損傷の発生頻度が高い女性も対象として実施することを計画している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実施者の所属先が変更になったことから実験環境の構築が必要となり、介入プログラムの効果検証を実施する三次元動作解析装置のシステム構築や、機材の変更に伴うシステムの構築に時間を要した。現在は、研究実施可能な状況となっている。このため、当初は前十字靱帯損傷の頻度が高く、切り返し動作が繰り返し行われる複数のスポーツを対象として動作解析を実施する予定であったが、実施が遅れている。 本研究では反応課題を用いた前十字靱帯損傷予防プログラムを作成し、その効果を検証することを目的にしている。昨年度の研究成果を利用して介入プログラムを作成したが、前十字靱帯損傷のリスクを減少させる結果は得られなかった。この理由として以下の点が挙げられる。 ①プログラムの負荷量の設定。傷害予防に効果的であった先行研究では負荷量を漸増させているものが散見される。本研究では研究期間中の負荷量は一定であったために、効果が得られにくかった可能性がある。 ②スポーツ動作における前十字靱帯損傷リスクの有無。近年の傷害予防に関する研究では、対象者の傷害のリスクの高さをあらかじめスクリーニングし、リスクが高いと判定されたものに対して実施することで効果的にプログラムを実施するものがある。ただし、反応的な動作において前十字靱帯損傷のリスクが高まることは明らかとなっているが、男子選手におけるリスクは不明な点が多い。今後は男子選手においてもリスクの程度を調査し、リスクの高い選手に実施することで、効果が得られる可能性がある。また、ステップ動作において前十字靱帯損傷の危険姿勢となりやすい女性を対象とすることで、プログラムの効果が得られる可能性がある。このようなことから、プログラムを再考して、再実験する必要性が生じている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策として、最初にプログラム内容の再検討を行う。プログラムの負荷を三段階として、各段階の目標を設定して、達成度に応じて難易度をあげる。対象者は男子選手に加えて、前十字靱帯損傷のリスクの高い女性選手も追加し、効果を検証する。 反応課題を用いた動作の解析に関しては、膝関節の三次元動作解析に加えて体幹部の機能関する検討を行う。具体的にはステップ時の体幹の傾斜角度や筋機能に関する検討を行う。対象者として、バスケットボールやバレーボールなど切り返しやジャンプ着地動作の頻度が高く、前十字靱帯損傷の発生頻度が高いスポーツを対象とする。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度の計画として、介入プログラムを作成し、効果が実証された際はDVDを作成し配布する予定であったが、次年度に延長した。 また、研究者の所属施設の移動に伴い、研究環境の整備に時間を要し、研究の実施に遅延が生じた。 次年度の研究として、ステップ動作の解析を対象をサッカーのみでなく、バスケットボール、バレーボールといったスポーツ選手に範囲を広げて競技特性も考慮した解析を行う予定である。そのため、動作解析に必要な消耗品の購入と被験者への謝金に助成金を使用する。 また、介入プログラムの効果を実証し、最終的には予防プログラムDVDを作成し配布できる準備を整える。
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