前十字靭帯損傷の発生メカニズムについて特に瞬時の判断を伴う課題の際の膝関節及び体幹の動きに着目して検討した。また前十字靭帯損傷の予防方法について検討した。 予防方法として、コアエクササイズとステップ課題を実施した。ステップ課題は複数のLEDを前方に設置し、ランニングやジャンプ直後にランダムに点灯するLEDごとに与えられた課題を反射的に実施する課題を重点的に実施した。予防介入は週に4回以上、6週間実施した。介入前後に以下の運動課題を実施した;前方ジャンプ直後に①サイドステップ、②クロスオーバーステップ、③前方ランニングの3つの運動課題を、ジャンプ着地直前に運動課題を指示する反応課題及び、予めステップ方向を指示した後に運動課題を実施する予測課題。三次元動作解析装置を用いて運動課題中の体幹及び膝関節運動を解析した。介入後の体幹動揺性は介入前に比べて減少した。また、膝関節の動揺性が減少し、反応的な課題を用いたステップ課題の実施により前十字靭帯損傷の危険姿勢を回避できる可能性が示唆された。また、ステップ時の足部接地時間が短縮され、ステップ課題に要した時間も短縮したことから、反応課題の継続的な実施により、パフォーマンスにも影響することが示唆された。また、育成年代選手に対して台から飛び降りた際の膝関節運動から前十字靭帯損傷の発生リスクを推定し、傷害予防プログラム前後での変化を比較した。育成年代においては発達に伴い前十字靭帯損傷のリスクが高まることが報告されているが、本研究ではリスク値が維持されており、適切な運動介入により前十字靭帯損傷の増加を抑制できる可能性が示唆された。
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