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2012 年度 実施状況報告書

骨格筋疲労に関連するカルノシン合成遺伝子の発現機序の解明

研究課題

研究課題/領域番号 24700712
研究機関環太平洋大学

研究代表者

前村 公彦  環太平洋大学, 体育学部, 准教授 (40454863)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2014-03-31
キーワードカルノシン / 骨格筋疲労 / 筋線維組成 / カルノシン合成酵素
研究概要

カルノシンは、βアラニンとヒスチジンから成るジペプチドで、ヒトをはじめとする多くの脊椎動物の骨格筋に存在している。またカルノシンの主な生理作用には、乳酸緩衝作用、活性酸素除去作用および筋小胞体でのカルシウムイオン調節作用などがあり、高強度運動中に引き起こされる筋疲労に関連する様々な生理機能に関与していることが知られている。また、スプリンターにおける骨格筋中のカルノシン量は、マラソン選手および一般人と比較して有意に高値を示すことや、カルノシン摂取や高強度トレーニングによって骨格筋中のカルノシン量が増加することが明らかになっている。しかしながら、その体内での合成機序は明らかになっておらず、これには近年同定されたカルノシン合成酵素(ATPGD1)が関与する可能性が推察されている。そこで本研究では、カルノシンの体内での合成機序における基礎的知見を得るために、骨格筋カルノシン濃度とATPGD1および筋線維組成との関係について明らかにすることを目的とした。被検者には一般健常男性20名を用い、これらの被検者の右脚外側広筋より筋バイオプシー法により筋サンプルを摘出し、骨格筋カルノシン濃度、ATPGD1および筋線維組成を測定した。骨格筋カルノシン濃度とType II線維との間に有意な正の相関関係が認められた。一方、ATPGD1と骨格筋カルノシン濃度およびType II線維との間には有意な相関関係は認められなかった。以上の結果から本研究では、骨格筋中のカルノシン量は、速筋線維に多く存在すること、また、それはカルノシン合成酵素の多少ではなく、トレーニングなどの環境的要因に起因する可能性が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究では、2年間の申請期間中で、骨格筋疲労に関連するカルノシン合成遺伝子の発現機序について、ヒトを用いて解明することを目的とし、平成24年度は、(1)一過性の高強度運動前後における体内でのカルノシンの変動を、血中および筋中レベルから検討し、それらとカルノシン合成遺伝子(ATPGD1)の発現量とを関連づけながら、カルノシンの代謝機序を経時的に観察すること、また、(2)カルノシン合成遺伝子(ATPGD1)と筋線維組成および運動パフォーマンスとの関係について検討することを目的とした。(1)の課題については、一過性の運動前後での採血および筋バイオプシーが技術的な問題により今年度実施することができなかったため、来年度の課題とする。(2)の課題については、当初の計画通りに実施することができ、カルノシンの合成機序について新たな知見を見いだすことができた。
被検者には一般健常男性20名を用い、これらの被検者の右脚外側広筋より筋バイオプシー法により筋サンプルを摘出し、骨格筋カルノシン濃度、ATPGD1および筋線維組成を測定した。その結果、骨格筋カルノシン濃度とType II線維との間に有意な正の相関関係が認められた一方で、ATPGD1と骨格筋カルノシン濃度およびType II線維との間には有意な相関関係は認められなかった。以上の結果から、骨格筋中のカルノシン量は、速筋線維に多く存在すること、また、それはカルノシン合成酵素の多少ではなく、トレーニングなどの環境的要因に起因する可能性が示唆され、カルノシンの合成機序について新しい知見を見いだすことができた。

今後の研究の推進方策

平成25年度は、カルノシン摂取による体内でのカルノシン濃度およびカルノシン合成遺伝子の発現について経時的に検討する。本研究は二重盲検法を用いて行い、被検者がどちらの群に属しているのかを分からないようにする。カルノシンもしくはプラセボ摂取前後に右脚外側広筋より筋サンプルを摘出し、骨格筋カルノシン濃度およびカルノシン合成遺伝子(ATPGD1)を、また採血により血中カルノシン濃度の測定を行う。筋生検および採血は、1人の被検者に対し摂取前および摂取後0.5時間、1時間、2時間、3時間後の計5回行い、骨格筋カルノシン濃度、カルノシン合成遺伝子(ATPGD1)および血中カルノシン濃度を経時的に測定する。骨格筋および血中カルノシン濃度は、得られた筋および血清サンプルを液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて測定する。カルノシン合成遺伝子(ATPGD1)の発現量は、定量PCRを用いてATPGD1遺伝子を、また、ウエスタンブロッティングを用いてタンパク質の発現量を測定する。カルノシン摂取群には、0.15 g/kgのL-カルノシン(浜理薬品株式会社)を体重に合わせて計りとり、水に溶かして摂取させる。なお、L-カルノシンは海外で販売しているL-カルノシンサプリメントの原料と同等であり、L-カルノシンのLD50値は、14.93 g/kg以上(経口投与、マウスによる急性毒性試験)で、先行研究においても、ヒトに4週間、364 gのL-カルノシンを摂取させており(Harris et. al. 2006)、安全性においても問題はない。

次年度の研究費の使用計画

研究経費の主な用途は、バイオプシー(筋生検)による筋線維組成、カルノシン濃度およびカルノシン合成遺伝子(ATPGD1)の解析に必要な消耗品と試薬が大半を占める。また筋生検は、被検者に対する負担度も大きいことから謝金を20千円に設定し、筋生検を実施する医師に対する謝礼も1日15千円で計上した。その他、本研究に関する情報収集、研究協力機関である国立スポーツ科学センターおよび日本ハム(株)中央研究所との研究打ち合わせ、研究成果を広く社会に還元するための国内・外での学会発表に関わる旅費、論文発表に関わる経費を計上している。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2012

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] 鶏肉抽出物の摂取が中高齢者の筋力に及ぼす影響2012

    • 著者名/発表者名
      佐藤三佳子、前村公彦、高畑能久、森松文毅、佐藤雄二
    • 雑誌名

      日本食品化学会誌

      巻: 59(4) ページ: 182-185

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Expression profiles of carnosine synthesis-related genes in mice after ingestion of carnosine or SZ akanine.2012

    • 著者名/発表者名
      Miyaji M., Sato M., Maemura H., Morimatsu F.
    • 雑誌名

      J. Int. Soc. Sports Nutr.

      巻: 17;9(1):15 ページ: -

    • DOI

      10.1186/1550-2783-9-15

    • 査読あり
  • [学会発表] 骨格筋カルノシン濃度とカルノシン合成酵素および筋線維組成との関係2012

    • 著者名/発表者名
      前村公彦、宮地崇之、中嶋耕平、中村格子、星川淳人、森松文毅、奥脇透、鈴木康弘
    • 学会等名
      第67回日本体力医学会大会
    • 発表場所
      長良川国際会議場
    • 年月日
      20120914-20120916
  • [学会発表] カルノシン摂取による骨格筋中カルノシン量とATPGD1遺伝子発現量の変化2012

    • 著者名/発表者名
      宮地崇之、前村公彦、佐藤三佳子、中嶋耕平、中村格子、星川淳人、森松文毅、奥脇透、鈴木康弘
    • 学会等名
      第67回日本体力医学会大会
    • 発表場所
      長良川国際会議場
    • 年月日
      20120914-20120916

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公開日: 2014-07-24  

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