研究課題/領域番号 |
24700713
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 広島工業大学 |
研究代表者 |
永澤 健 広島工業大学, その他部局等, 准教授 (80390566)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ストレッチング / 血管拡張機能 / 動脈硬化予防 |
研究概要 |
伸長部位の血管機能に対する一過性の静的ストレッチングの急性効果の解明に取組んだ.まず,一過性の静的ストレッチングが伸長部位局所の血管拡張機能に与える効果について検討した.健常成人男性10名を対象として,手関節の受動的伸展による静的ストレッチングを実施した.伸長時間30秒,反復回数4回(30秒間隔で実施)とし,静的ストレッチングの強度は最大伸展角度とした.血管拡張機能の評価は,上腕部をカフにて5分間の動脈血流遮断を行い,反応性充血後における前腕屈筋群の組織酸素飽和度(StO2)の回復時間(ハーフタイム)から評価した.計測は安静時,静的ストレッチング終了30分後に行った.静的ストレッチング30分後のStO2ハーフタイム(10.5±3.9秒)は安静時(13.6±3.4秒)と比較して有意に短縮した(p<0.05).一方,静的ストレッチングにより伸長していない前腕伸筋群(主に尺側手根屈筋)のStO2ハーフタイムには有意な変化がなかった.本研究における静的ストレッチングによる反応性充血後のStO2ハーフタイム短縮は,伸長部位局所の血管拡張反応が亢進したことに起因するものと推察され,このことから,静的ストレッチングは伸長部位局所の血管拡張機能を向上させる急性効果がある可能性が示唆された.しかしながら,反応性充血後のStO2ハーフタイムの生理学的意義についてはさらなる検討を行っていく.また,静的ストレッチング(30秒×3回反復)が伸長部位の筋血流を上昇させ,筋組織の酸素飽和度を有意に増加させることを明らかにし,学会報告を行った.さらに,下肢の静的ストレッチングの実施手法について検討し,下肢のセルフストレッチングのプログラムを精選した.これにより次年度に計画している片脚に対する静的ストレッチング実施後の動脈伸展性の変化についての検証を円滑に進行できると思われる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画の一過性の静的ストレッチングが伸長部位局所の血管拡張機能に与える効果については,順調に実験計画が進み,実験結果をまとめることができている.また,一過性の静的ストレッチングが伸長部位の動脈伸展性(脈波伝播速度)を増大させるかどうかについては,予備的実験が順調に進んでおり,平成25年度中に実験結果をまとめることができる.このようにおおむね研究計画は順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
前年度の研究成果を基にして,平成25年度は血管機能の改善に効果的な静的ストレッチングの処方条件の探索に取組むとともに,最終年度へ向けて,研究計画を着実に遂行する. まず,一過性の静的ストレッチングが伸長部位の動脈伸展性(脈波伝播速度)を増大させるかどうか,片脚に対するストレッチング実施後の動脈伸展性の変化を対照脚と比較する.片脚に対する静的ストレッチングが対照脚と比較して,伸長した脚の動脈伸展性を増大させるかどうか,下肢(大腿-足関節)の脈波伝播速度(femoral-ankle Pulse Wave Velocity:faPWV)を計測することにより調べる.静的ストレッチングは,片脚の大腿部と下腿部について合計4種目,伸長時間30秒,反復回数4回の条件で実施する.PWVの計測は安静時,ストレッチング直後,30分後,1時間後に行う. さらには,血管拡張機能および動脈伸展性の改善に最も効果が高い一過性の静的ストレッチングの伸長時間の条件を調べる.伸長時間の条件以外は前年度と同様の実験手順とする.伸長時間の条件は,15秒,30秒および60秒の3種類とする.各条件の反復回数は4回,ストレッチングの間隔は30秒とする.また,血管拡張機能および動脈伸展性に対する静的ストレッチングの急性の効果が,ストレッチングの反復回数の違いに影響を受けるかどうか調べる.静的ストレッチングの反復回数の条件を2回,3回,4回の3種類とし,伸長時間の条件は前述の実験結果を基に決定する.以上の研究計画を推進することで,静的ストレッチングがもたらす血管機能改善効果の解明に取り組む.
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次年度の研究費の使用計画 |
反応性充血検査による血管機能の評価のために体肢の動脈血流遮断を実施するが,カフへの空気注入と排出を手動により実施すると,動脈血流の遮断と開放に時間を要することになる.したがって,瞬時にかつ正確にカフへ空気を注入および排出できる電動式デジタルエアータニケットを備品として購入する計画である. その他の研究費の使用計画は,消耗品費として,電極,アルコール綿,近赤外分光法の測定に必要なプローブおよび血流遮断用のカフ,弾性包帯,サージカールテープ等を計上する. 旅費として,研究協力者との打合せ費用,学会での成果発表,学会参加の費用を計上する.また,謝金として外国語論文の校閲の費用を計上する.
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