研究課題/領域番号 |
24700713
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研究機関 | 畿央大学 |
研究代表者 |
永澤 健 畿央大学, 健康科学部, 准教授 (80390566)
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キーワード | ストレッチング / 動脈硬化 / 血管機能 / 運動処方 |
研究概要 |
静的ストレッチングが伸長部位の動脈伸展性(脈波伝播速度)に及ぼす急性効果の解明に取り組んだ.健常成人男性9名(非喫煙者,運動習慣無し)を対象にして,一過性の静的ストレッチングが伸長部位の脈波伝播速度(Pulse Wave Velocity;PWV)を増大させるかどうか,片脚に対するストレッチング実施後の動脈伸展性の変化を対照脚と比較した.動脈伸展性は下肢(大腿動脈‐足関節)の脈波伝播速度(femoral-ankle PWV;faPWV)と上腕‐足関節間脈波伝播速度(brachial-ankle PWV;baPWV)から評価した.静的ストレッチングは,片脚(右脚)の大腿部と下腿部について合計15種目を伸長時間30秒(間隔20秒),反復回数2回の条件で実施した.PWVの計測は安静時,ストレッチング10分後,30分後,60分後に行った.ストレッチングを実施せずに安静を保持するコントロール条件を設けた.実験の結果,静的ストレッチング後のfaPWVおよびbaPWVは安静条件と比較して有意な変化がなかった.本研究の結果から,健常成人男性における一過性の静的ストレッチングには動脈伸展性を増大させる急性の効果を認めなかった.さらに,静的ストレッチングの反復回数の違いが伸長部位の筋組織酸素飽和度に及ぼす影響について検討した.その結果,30秒1回の静的ストレッチングでも伸長部位の筋血流を上昇させ筋酸素飽和度が有意に上昇することを明らかにし,血液循環亢進のための静的ストレッチングの処方条件の一部を提示することができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画の静的ストレッチングが伸長部位の動脈伸展性(脈波伝播速度)に与える一過性の影響について,順調に実験計画を遂行し,結果をまとめることができている.また,静的ストレッチングの反復回数の違いが伸長部位の血液循環に及ぼす影響について検討を行い,血液循環の亢進に有効な静的ストレッチングの処方条件を提示することができ,研究計画はおおむね順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの血管機能に対する静的ストレッチングの急性効果および血液循環の亢進に効果的な静的ストレッチングの処方条件の探索に関する研究成果を基にして,本年度は,血管機能に対する運動療法としての静的ストレッチングの有効性を検証するとともに,静的ストレッチングがもたらす血糖値低下作用と動脈硬化症予防効果の解明に取り組む.まず,静的ストレッチングのトレーニングが伸長部位の脚の血管機能を改善させるかどうかについて検討する.片脚に対するストレッチングのトレーニングが対照脚と比較して,伸長した脚の動脈伸展性を増大させるかそうか調べる.次に,食後の静的ストレッチングの実施が食後高血糖を改善させるかどうかについて検証を進めていく.糖負荷後に受動的ストレッチングを実施して,その際の血糖値の変化を座位保持の対照条件と比較する.ストレッチング条件では糖負荷試験後にパートナーによる受動的な静的ストレッチングを実施する.ストレッチングによって食後に上昇した血糖値を低下させることができれば,食後高血糖の改善とそれに伴う動脈硬化の進行を抑制できるものと期待できる.以上の研究計画を推進することで,静的ストレッチングによる動脈硬化予防効果の解明する.研究成果は,運動療法現場での活用を視野に入れ,動脈硬化症予防に寄与するためのストレッチングプログラムの構築を目指す.
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次年度の研究費の使用計画 |
当初計画では,反応性充血検査による血管機能の評価のために,電動式エアタニケットを購入し使用する予定であったが,フットポンプを使用しても十分に予定していた動脈血流遮断が実施可能になったため使用計画を変更し,未使用額は次年度に行う追加実験に伴う試薬や消耗品の購入に充てる. 使用計画として,近赤外分光法の測定に必要なプローブおよび血流遮断用のカフ,弾性包帯,サージカールテープ,血液分析用の試薬等の消耗品費,被験者謝金,資料収集費用を計上している.旅費として,研究協力者との打合せ費用,学会での成果発表の費用を計上している.
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