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2012 年度 実施状況報告書

予測的な運動スキルの学習による外傷予防効果の解明

研究課題

研究課題/領域番号 24700716
研究種目

若手研究(B)

研究機関武庫川女子大学短期大学部

研究代表者

小笠原 一生  武庫川女子大学短期大学部, 健康・スポーツ学科, 講師 (70443249)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワード前十字靱帯 / スポーツ外傷 / 内部モデル / 予測 / 傷害予防 / トレーニング / リハビリテーション / 意識下
研究概要

捻挫や突き指などのスポーツ中の怪我は外力の作用からケガの発生までの時間が極めて短いため,感覚フィードバックによる随意的な回避が間に合わない.よって,これを予防するには環境変動を予測し安全な運動をフィードフォワード的に生成するスキルが必要と考えた.そこで本研究は,脳における予測的な運動生成とその学習機能に注目し,予測的運動の獲得がスポーツ外傷予防に果たす役割を解明することを目的とした.
初年度は主に「予測的な運動制御の学習のためのパラダイムとその評価指標の決定」を行った.パラダイムは認知タスク中に姿勢制御タスクを行うデュアルタスクとした. 被験者には20cmの台上から前方へジャンプし利き足で着地後,2秒間の安定姿勢を保つよう求めた(姿勢制御タスク).また,着地の際はレーザーポインタがランダムに示したターゲットを踏むように求めた(認知タスク).姿勢制御タスクにおいて衝突を含む片脚着地を採用したのは,着地直後の姿勢制御は足底からの感覚入力に頼れない時間帯があるため,この時間帯を対象とすることで「予測的な姿勢制御」の能力を評価できると考えたためである.また,認知タスクの理由は,スポーツ選手がボールや相手選手に注意を向けながらも意識下で姿勢制御を行う競技中の状況を実験的に再現するためである.評価指標は着地後0~0.1秒までの足圧中心軌跡長(COP長)とその周波数成分とし,20名の健常被験者を対象に上記のパラダイムで予測的な姿勢制御が学習できるかを検討した,その結果,60回ほど片脚着地を継続するとCOP長が徐々に減少し,試行を追うごとに安定な着地姿勢が獲得されることが示された.また,これに個人差があることが明らかとなった.今年度の結果より予測的な姿勢制御は認知タスク下でも学習でき,スポーツといった複雑多様な環境下でも安定な姿勢制御がトレーニングによって獲得できる期待が得られた.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成24年度の研究進捗は順調である.当初の目標であった予測的な姿勢制御学習のための動作パラダイムとその評価指標の決定は遅延なく実施できた.また,この結果をもとにAmerical college of sports medicine学術大会にて発表も行えた.被験者数も20名と十分な人数を確保できた.物品費で購入予定であったモーションキャプチャ用カメラ一式の納期が大幅に遅れたことは想定外であったが,この機材は本来は平成24年度の実験では使用を予定していなかったため,平成24年度の実験には影響しなかった.本機器は平成25年度以降の計測環境を構築するための早めから予備テストする予定で購入したが,こちらは納期遅延の影響を受け多少遅延している.平成25年度初頭にはこの遅れを取り戻す予定である.

今後の研究の推進方策

平成25年度は24年度に決定したパラダイムにもとづき,予測的な運動制御スキルを評価するための計測システムを構築する.本システムのハードウェアは24年度購入物品のモーションキャプチャシステムと25年度購入予定のUSB DAQ,ワイヤレスEMGセンサから成り,LabVIEWスクリプト(National Instruments社)で制御される.片脚着地後の姿勢安定を足圧中心軌跡長やその周波数成分で評価し,実施者に対してPCモニタを介して運動結果をフィードバックするシステムである.実施者の安全を考慮して十分なテストを繰り返す.安全が確認されたら,年度後半から,同大学の運動部(ハンドボール部,バスケットボール部,タッチフットボール部)に依頼し,システムのテストを実施するとともに,参加した運動部員の予測的姿勢制御能のプロファイルを得る.このプロファイルは平成26年度(研究最終年度)に実施する外傷予防プログラムの介入調査における基礎資料となる.
システムの大枠は平成24年年度のパラダイム設定において繰り返した実験環境が基盤となるため,比較的スムースにシステム構築が進むものと思われる.システムのゴールは選手がひとりでシステムを操作しつつ予測的な姿勢制御能を評価できるような手軽さであり,そのためには例えば民製のTVゲームのようにユーザーのナビゲーションがしっかりとできるソフトウェアの作りこみが必要となる.ここでは,ユーザフレンドリーなソフトウェア開発に実績のあるエンジニアにアドバイスをいただく予定であり,研究推進に遅れを出さないようにする.

次年度の研究費の使用計画

平成25年度の物品費はシステム構築のためのUSB-DAQの購入に充てる.その他には実験協力者(被験者等)への謝金と学会旅費,論文投稿費に充てる.平成26年度予算の前倒し請求はしない予定である.

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] ビデオ解析による非接触型前十字靱帯および内側側副靱帯損傷時の膝モーメント推定と受傷メカニズムの物理的考察2013

    • 著者名/発表者名
      小笠原一生,古賀英之,中前敦雄,奥脇透,佐久間克彦,福林徹,宮川俊平
    • 雑誌名

      日本臨床スポーツ医学会誌

      巻: 21 ページ: 131-142

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Assessment Of Prediction And Learning Effect On Dynamic Postural Stability In Single Leg Landing Task2012

    • 著者名/発表者名
      Issei Ogasawara, Yoshio Koyanagi, Ken Nakata
    • 雑誌名

      Medicine and Science in Sports and Exercise

      巻: 44 ページ: s545

    • 査読あり
  • [学会発表] Assessment Of Prediction And Learning Effect On Dynamic Postural Stability In Single Leg Landing Task2012

    • 著者名/発表者名
      Issei Ogasawara, Yoshio Koyanagi, Ken Nakata
    • 学会等名
      American College of Sports Medicine 58th Annual Meeting
    • 発表場所
      San Francisco, US
    • 年月日
      20120529-20120602

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公開日: 2014-07-24  

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