アンモニアは主に肝細胞内のミトコンドリア(Mit)における尿素回路にて代謝される。尿素回路は複数のアミノ酸から構成されるが、Mit外にそれらが豊富に存在すると、受動的にMit内に取り込まれ、反応速度が高まるといわれている。Mit外の尿素回路構成アミノ酸(UCAA)のMit内への取り込みは、オルニチントランスポーター(ORNT1)により行われる。しかし、ORNT1がUCAAを受動的に取り込むかは明らかにされていない点が多い。そこで本研究ではMit外UCAAのMit内への受動的な取り込みについて明らかにするために、各組織におけるORNT1の発現量を定量化し、各組織へのUCAA受動的取込量とORNT1の発現量との関係を明らかにすることを目的とした。 平成24年および25年度までの予備実験および基礎研究において、ラットの各組織におけるORNT1発現量を定量化し、各組織におけるORNT1発現量の明らかにした。それらに基づき、組織ごとのMit外UCAAのMit内への受動的な取り込み量と、組織ごとのORNT1の発現量との関係を検討したが、関係は認められなかった。異なる組織間では、受動的な取り込みの条件が異なることも予想されたので、平成26年度では、UCAAの受動的な取り込み量とORNT1の発現量の関係を検討する際の方法を見直した。つまり、ラットに運動負荷を与え、それに伴うORNT1の発現量の変化を定量化し、それとUCAAの取り込み量との関係を検討した。これまでの研究成果を総合すると、Mit外UCAAのMit内取り込みには、単純な量‐反応関係にないことが示唆された。一方で、尿素回路の反応速度を規定するN-アセチルグルタミン酸(AGA)合成酵素活性を高めることで、この量‐反応関係も変化する可能性が考えられ、今後も継続して検証していく必要がある。
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