前頭葉はヒトにとって重要な様々な機能を担っており、それらの機能と運動との関連性について広く知られるようになってきているが、重要な機能の一つである抑制機能が運動によりどのような影響を受けるのか詳細は分かっていない。本研究の目的は、ヒトの前頭葉にある抑制機能が運動によりどのような影響を受けるのか時空間的に詳細を検討することである。平成24、25年度には、時間的な分解能に優れ抑制機能の時間的な変化を詳細に観察することができる脳波計を用いて、有酸素運動が抑制機能に対してどのような影響を与えるのかGo/No-go taskを用いて実験を行った。その結果、至適強度の有酸素運動はGo/No-go taskにより誘発されるNo-go反応の振幅を有意に増大させることが分かった。No-go反応は、ヒトの抑制機能を反映していると考えられる反応であり、この反応の振幅が増大したことはヒトの抑制機能がより強く働いた結果を反映していると考えられる。平成26年度は、この実験結果をまとめ学会発表を行い、論文を作成した。論文は、現在欧米の雑誌に投稿中である。また、もう一つの研究目的である運動による抑制機能の空間的な変化について、空間的な分解能に優れ運動を伴う実験に用いることが容易であり抑制機能の空間的な変化を詳細に観察することができるNIRSを用いて予備的な実験を行った。その結果、至適強度の有酸素運動を行うと前頭葉のoxy-Hbが増大する傾向を観察することができた。これまでの結果から、ヒトの抑制機能は至適強度の有酸素運動によりその機能をより強く発揮することが分かった。
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