本研究は、開発途上国の教育研究機関と共同し、①開発途上国の子どもたちの精神的・身体的健康度・ライフスタイル、ソーシャルサポートの現状を簡易に測定するツールを開発し、②経年変化をアセスメントするシステムを構築した。また、継続的調査の実施により、③都市化や近代化によるライフスタイル、ソーシャルサポートの変化が、子どもの精神的・身体的健康度に与える影響を明らかにした。さらに、④本研究で開発したツールを用いて同様の調査をアジアの近隣諸国で展開することにより、アジアにおける学校保健研究の活性化と研究ネットワークの強化に貢献することを目的とした。3年目となる26年度は、当初予定していた海外の他地域への展開準備を進めたが、十分に準備状況が整わなかったことと、ラオスの共同協力者からの強い依頼もあり、ラオスにおいて25年度に行った同様の調査方法に、簡易健康診断を組み合わせて調査を実施した。その結果、農村部と都市部では、起床や睡眠時間、生活行動に差があることが推察された。また、特に都市部では、疲労感や倦怠感などを日常的に感じている子どもがいることも推察された。また、ラオスにおける一連の調査活動を通して、約2万人の子どものデータを収集することに成功した。さらに、ラオス国立大学教育学部を中心として、地方教員養成校の教員が、近隣の学校から継続的に調査データを収集する仕組みと、それを可能にする人材の育成に成功した。しかしながら、ラオスにおいて自律的・持続的に調査を実施していくためには、調査に必要となる資金の確保、さらに収集したデータをいかに教育的に活用していくかを同時に検討していく必要があることが課題として考えられた。また、調査で得られた結果の一部を、ラオスの保健省が主催する国際学会で報告した。また、アジアの学校保健の行政関係者が研究者が参加する研修に参加し、研究ネットワークの構築を進めた。
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